真夜中のダリア 著:鳴海章

鳴海章:著
角川書店 ISBN:4-04-343004-3
2000年10月発行 定価800円(税込)

新宿二丁目で続発するゲイバーの経営者ばかりを狙った殺人事件…もぐりの接骨医・仙道がこの街に流れ着いて以来、顔見知りばかり被害にあっていた。ゲイバー“ミリオン・ローゼス”のママ、トヨクニは、自分たちにも被害に遭うことを危惧し、実娘の朱美のボディガードを仙道に任せるのだが…。
事件はかなり残虐…脅えるオカマさんたち、どこか陰のある男・仙道もなぜか事件に興味を持っている様子。仲の良いゲイのトヨクニが、一度だけ女と結婚した時に生まれた愛娘の朱美ちゃん…彼女が事件に首をつっこみ危険にさらされるのを、独り者のさびしい仙道が心配してるのかな?なんて思いながら読み進んでるんですけど…。
作品の序盤で、犯人側視点も描かれ、何でオカマばかり狙われているかはおおよそ判明…でも主人公の仙道たちも、警察も状況がつかめないで右往左往、事件はどんどんエスカレート…。犯人側はどうやら仙道のことをしっているようだぞというところで、少しずつ仙道の過去なども語られていき…。
人の愛し方、人からの愛され方が下手で不器用な、屈折した人たちがいっぱい、集まってくるお話だった。朱美のおかげで、多少、父性愛じみたものを感じながらも、まだどこか他人な仙道さん…でも過去にいろいろあったのね。あのキャラとあのキャラはそういう関係なんだろうとは予想できたけど…過去のエピソードで語られた伏線に気づかず、この物語最大のサプライズは見抜けなかった。
話の盛り上がりとしては朱美が事件に巻き込まれたあたりが一番のピークか?仙道とあの人物の因縁めいた関係に、もっと劇的な終結の仕方を期待していたが、あっ気ない展開。ラストも驚きはあったにせよ、もう少し続きが読んでみたい、詳しい真相なんかも知りたいぞという欲求に駆られた。
個人的採点:65点