誰もわたしを愛さない 著: 樋口有介

樋口有介:著
東京創元社 ISBN:978-4-488-45908-6
2007年9月発行 定価882円(税込)

創元推理文庫の改訂版、柚木草平シリーズの第六作目、いろいろな諸事情でオリジナル(講談社版)の刊行順と変更されている
行きずりの犯行に見えた、女子高生ラブホテル殺害事件…編集部の依頼で、この事件をルポすることになった柚木草平は、新米の女性担当編集者に発破をかけられながら、被害者の女子高生の調査を開始。最初は乗る気ではなかったが、調べるうちに変なひっかかりを感じ始め…。
ひとつ前に読んだ「夢の終わりとそのつづき」は、柚木シリーズのエピソード0的な物語で、他の作品を柚木作品に書き変えたなんて経緯からも、違和感を感じ、ある意味、それが新鮮にも感じたわけだけど…ようやく、いつもどおりの柚木草平シリーズが戻ってきたなという印象。それもそのはず…これが実際は中編集「探偵は今夜も憂鬱」に続く、シリーズ第4作目なのだそうだ。
事件の背景などは、過去の他の青春ミステリー系で、同じような題材を扱ってたよなぁ?ってところもあるんだけど…犯人なんかは、変えてきてるね。オリジナル発刊時には、帯で犯人がバラされてたとか、著者があとがきで語っていて…この作品はトリックや犯人探しで勝負するような作品じゃないと、担当さんに言われたのだとか(笑)
確かにね…その帯でのネタばらしがなくても、犯人だったキャラが出てきた瞬間に、樋口作品のパターンなんかで、本文だけでもコイツだなって気づきます(笑)
愛人の冴子さんや、娘の加奈子とのやりとりも相変わらずだが、草平を担当することになった新米編集者の直海ちゃんのキャラがなかなか。柚木を惑わす飛びぬけた美女ではないんだけど、とぼけた可愛さ、ズレた感じが…「刺青白書」に出てきた女子大生の鈴女にも似ているかななんて…。正規の発刊順で行くと、鈴女が直海に似てるのか?
個人的採点:70点