探偵は今夜も憂鬱 著:樋口有介 | 105円読書

探偵は今夜も憂鬱 著:樋口有介

探偵は今夜も憂鬱 探偵は今夜も憂鬱

樋口有介:著
東京創元社 ISBN:4-488-45903-X
2006年11月発行 定価720円(税込)









今年になって「彼女はたぶん魔法を使う」の創元推理文庫版を読んで、ハマリはじめた樋口有介…これもまた、過去に講談社で出ていた作品の創元推理文庫、復刊版。元刑事で、今ではしがないフリーライター…アルバイトで探偵のまねごとをする柚木草平シリーズの3作目で、初の中編集だとか…。

雨の憂鬱

吉島冴子の紹介で、エステ・クラブ社長、園岡えりからの依頼を受けることになった柚木草平。亡き夫の妹の奈保子が、変な男に付きまとわれて、トラブルになっているので、解決して欲しいということだったのだが…調査を始めた矢先にえりが、殺されてしまった!

いい女だなぁ~っていつもの病気で一目惚れした女が、口説く間もなく殺されてしまうという…ちょっと長編二作目の「初恋よ、さよならのキスをしよう」の初恋相手が殺された事件とちょっとダブるかなって感じた。

人が殺されているし、こう思わせておいて、実はこっち…みたいな、ミステリー的なオチは、今回の3本の中でいちばんうまく効いていたように思う。


風の憂鬱

ナンバー10の葉子ママからの紹介で、芸能事務所社長の久保田輝彦に引き合わされた柚木草平…実は有名女優の沢井英美が行方不明になっており、マスコミに知られずに、探しだしてほしいということなのだが…。

芸能人の失踪を調査する話…調査をサポートする女優のマネージャーがなかなか。探し当てた女優さんと草平がなんかいい感じになるのかな?なんて思っていたら…いわゆる、そういうお約束のヒロイン役が、マネージャーの方だったわけで。

草平とこの女マネージャーの会話などをしっかりと読んでいると、ピーンっと引っかかる箇所があり。草平の踊らされっぷりが愉快。


光の憂鬱

2丁目のバー、クロコダイルのマスターに呼び出された柚木草平。そこには前に一緒に飲んだという和実という女が待っていて、友達の悩みを解決してほしいという。その内容とは、和実の知り合いで雑貨店の美人オーナー外村世伊子に、山で遭難して死んだ筈の夫から三年ぶりに手紙が届いたというのだ…。

“死者からの手紙”なんて出だしは一番ミステリアスであったが…真相はそんなに奇を衒ったものではない。それよりも、途中でほっぽり出した書きかけの原稿が仕上がったかどうか、気になってしまうよ(笑)



とりあえず、どれも…美人と金の誘惑に駆られて、事件に首をつっこんでしまうというお約束のパターン、やっつけ仕事で適当にって思っているうちに、けっこう本気になっちゃう草平。

中編ということで…登場人物が少ないので、犯人当てはわりと容易。会話の節々なんかに、伏線がしっかりと隠れており、ちゃんと読んでいると、けっこう真相にたどり着ける。

作者はあとがきで、長編に比べて短編や中編は苦手なんだよなぁとこぼしたりもしているのですが…どれも無理なく、こざっぱりとまとまっており、読みやすい。

相変わらず、女性に対する皮肉なセリフがどれも愉快。でも、男としては、こんなセリフを吐いてみたいよなって何度も思うわけで…実際に真似したら、大間抜けだろうけど、草平が言うと、かっちょいいんだよなぁ。






個人的採点:75点