インディゴの夜 著:加藤秋実
インディゴの夜
加藤秋実:著
東京創元社 ISBN:978-4-488-46801-9
2008年3月発行 定価714円(税込)
ミステリフロンティア配本作品の文庫化…今年文庫で出たばかりなのに、表紙が汚れてたから、ブックオフでもう100円コーナーに落とされてました、ラッキー♪TV化された「モップガール」の作者なので、気になってました。内緒でホスト経営してるライターとホスト仲間が事件を解決していく連作短編。
インディゴの夜
個性的な男の子が接客するホストクラブがあればいい、自分が発した一言で知り合いの編集者・塩谷と共にホストクラブのオーナーをすることになったフリーライターの高原晶。そして今では渋谷の人気店になったホストクラブ“club indigo”…ある晩、晶が店の仲間たちと飲んでいるときに、ホストの一人から電話が!常連客の一人が殺されたと…。
キャラやホストクラブなど設定の説明的な描写にも配慮しつつ、殺人現場に残されていた不自然なメッセージなどしっかりとした伏線やどんでん返しが利いたミステリーになっていた。犯人だった某登場人物も、言動や動きを見ていると怪しいとピンっとくるし、短編としての按排のうまさを感じた。
原色の娘
“club indigo”のホスト・ジョン太が、知人から小学生の女の子、祐梨亜を預かることになったのだが、まわりまわってその子の面倒をみる羽目になってしまった晶。ある晩、黙って祐梨亜が行方をくらませてしまい大慌て。いなくなる前に、別のホストクラブのナンバーワンホストとプリクラを撮りたいと言い出していたのを思い出し…。
表題作に比べると、ミステリーとしては普通。ただ、小娘に引っ張りまわされる晶やホストたち…男勝りの晶に、女っぽさが垣間見えたり、ナンパな感じのホストたちが、意外とまじめないいやつだったりという、キャラの一面はよく描けていた。渋谷だったら普通にありそうな、無知な子供が犯罪に巻き込まれるという警告めいたお話。ませたガキがお小遣い欲しさに、知らないおっさんについていっちゃうなんて、日常茶飯事なんだろうなぁ。
センター街NPボーイズ
知り合いのオカマ、なぎさママからの依頼で、渋谷区長の娘をハメ撮りし、恐喝してきた犯人の確保と、写真の処分を依頼された晶たちは…“club indigo”のホストの協力のもと、ナンパ師に注目。該当者を探し始める…。
これも「原色の娘」と似たくくりだな…ミステリーとしては無難な展開。ナンパ用語と、ハメ撮り投稿雑誌のリアルな描写になるほどと、関心(笑)「ナンパも命がけ!」と豪語するナンパ師のにーちゃん凄すぎ。そしてなぎさママの活躍は、ちょっと卑怯だろ!
夜を駆る者
“club indigo”を突然やめたホストのBINGOから久々の電話が…しかし相手は切羽詰まった様子で「助けて」と言い残したまま、電話は切れてしまった。その直後、“club indigo”のメンバーの前に、BINGOの常連客の一人だったキャバ嬢ハルカが半裸姿で現れ、やはり助けを求めてきたのだが何者かに拉致されてしまう…。そして翌朝、BINGOの死体が発見され…。
導入部のインパクトはなかなか…物語の核は、晶が他のホストクラブに潜入するって展開に。割と…自分がイメージしているホストクラブってこんなとこ?な雰囲気。本当のオーナー2人を支えている“club indigo”の表オーナー憂夜さんの正体がわかるかなって思ったけど、ここでも判明せず。続編があるようだから、そっちまでお預け??
キャラクターの描写が面白く、軽めの文章の中に、出版業界とホストクラブ、風俗業界の内情などが意外とリアルに描写もされている。渋谷、新宿、池袋の盛り場の雰囲気をよく伝わってくる。ただ、石田衣由の「池袋ウエストゲートパーク」的なノリに近いところがあり、語り手の主人公をヤンチャな三十路女、周りのチーマー軍団をホストに変えたような印象も受ける。
作品の発端でもあるのだが、一般的なホストらしくないホストという設定だからこそ、チーマー的なイメージとダブッてしまうのかも?ただ、単純にエンターテイメントとして面白く読めたのは確か。
巻末の荻原浩の解説を読んで判明したのだが、TVの「モップガール」と原作は全くの別物だそうで(笑)、あの「トゥルー・コーリング」のパクリドラマを痛烈に批判していた。「モップガール」の原作も読みたいなぁ、100円コーナーにないかなぁ?
個人的採点:65点