学園百物語 著:菅生誠司

菅生誠司:著
徳間書店 ISBN:4-19-850713-9
2006年8月発行 定価860円(税込)

自分もよく読んでいる「ヤングガン・カルナバル」など、ライトノベルよりももう少しハードで大人向けなエンタテイメント作品を数多く出しているTOKUMA Edgeレーベルの本をいろいろと集めたので、そろそろまとめて読んでみようかなって思ってるところ。これは「学園百物語」といってホラーっぽい内容。
現代国語の教師、多岐川彩子が学校で転落死した。学校葬が行われた当日…彼女のことを知る4人の男女が構内にある弓道場に集まった。彼女の生前の思い出を、百物語形式で語るようにと何者かに呼び出されたのだ…。首謀者の正体は検討がつかないものの、とりあえず趣旨を理解した4人は、それぞれ自分と彩子の間柄や彩子と関わったことで起きた不思議な出来事を懐かしみながら語り出すのだが…。
あまり知らない作家…それもそのはず、これが小説のデビュー作らしい。しかし、漫画原作やゲームのシナリオなどを手がけているということで、文章はなかなか手練れたもんがあり、その辺の新人作家とは全然違います。
4つのエピソードを語った後に、最後の仕掛けが解かれるといった、連作短編っぽい構成。それぞれ、1章目はサイコスリラーっぽい展開、2章目は怪奇・怪談小説っぽい展開、3章目はライノベっぽいドタバタ系で、4章目が一番、作品の要になるであろうオカルト調。
語り手が変わりながら、事件の詳細と、自分が思っている多岐川彩子の存在を語っていくんだけど…バラエティに富んでいて、各々の話の展開も面白いし、多岐川彩子って何者?百物語を企んだ首謀者は誰?何の意味があるの?っていう数々の謎もどんどんと深まっていく。
ただ、3章目の後半は、ゲームのシナリオ書いてるっていう著者の得意分野を出し過ぎかなり脱線気味で、これがなければ各章のオチも、物語全体のオチも…ホラーとしてけっこう怖さを演出できてるだけに勿体ない。特に2章目なんかは、オーソドックスなネタだったけど、文章が上手いので、怪談っぽい雰囲気が本当によくでている。
このレーベルの中で、シリーズ化されているような他の作品に比べると、あまり評価はされてないみたいだけど、自分は好きですね。けっこうおもしろかったです。
個人的採点:70点