1303号室 著:大石圭

大石圭:著
河出書房新社 ISBN:4-309-01725-8
2005年8月発行 定価1,303円(税込)

久しぶりに大石圭のホラー小説…実はこの作品が映画化されており、そのDVDが最近出たので、映画版を見る前に原作を読んでおこうと思って手にした。かなり前に100円コーナーでGETしてあったんだけど、積読本の仲間入りしていたのね。映画が劇場公開された頃に文庫版も出たが、そういうわけで、自分はハードカバー版にて…。
湘南の海の近くに建つ、13階建てのマンション…そのマンションの1303号室の住人だった若い女性たちが、続けて飛び降り自殺をして死んだ…。妹の死後、部屋の後片付けに訪れた緑川真利子は、妹の恋人から妹は幽霊に殺されたという話を聞くが、もちろんそんな話は信じられなかった。しかし、いざ1303号室に踏み入れた真理子が体験したのは…。
「呪怨」以外で、著者が初めて手掛けたオカルト系ホラーということだが、自分はその後に発表した「水底から君を呼ぶ」を先に読んじゃってるので、そんなに新鮮なわけではなかった。作品の舞台を考えると、数年前に起きた“平塚5遺体事件”なんかを想像してしまう部分もあるが、この作品が発表されたのは、あの事件の発覚よりも前ですね…。
自殺者たちの姿を描いた後に、解決編と言わんばかりに、何がこの1303号室で起きていたのかというのが明かされていく。それまでもたびたび挿入されていた、事件の発端になっていると思われる人物の回想と、現在の様子が上手くシンクロしていくのだが…。
えっと、最初の方は湘南ということで、都市名が出てこないんだけど、大石ファンであり、地元民なので、描写だけで分かります。ようやく名前が出てきて、やっぱりねってニヤリ。ちょっとまて、そしたら、この作品内に出てきた、あの女の住んでいた場所から推理すると、自然に考えると通っていた小学校と中学校は同じだな…(小学校は番地によりお隣の小学校かもしれんが、少なくても中学は同じ)。作品の発表時期と作品内の年齢設定で計算すると、年齢も近い(笑)
原作者が強調するほど、オカルト的な怖さというのは感じなかったが、いまだに家族にパラサイトな身分でいる自分なんかは、一人でほっぽり出されたら、公共料金の支払いひとつにも戸惑ってしまうかもしれないぞ?というリアルな恐怖にゾクリとしてしまった。何が何でも人間は自立しなきゃいけないよという作者からの警告だったりして…。
文庫版1303号室
河出書房新社 2007年10月発行 定価620円(税込)
個人的採点:65点