帰郷 刑事・鳴沢了 著:堂場瞬一

堂場瞬一:著
中央公論新社 ISBN:4-12-204651-3
2006年2月発行 定価800円(税込)

父親の葬儀のため新潟に帰ってきた鳴沢了…そんな彼の元へ、かつて父親が手がけた事件の被害者の息子・鷹取正明が押し掛けてくる。その事件は、刑事時代の父が唯一の未解決事件だというのだが、奇しくも父親の葬儀の日に時効を迎えていた。正明は、当時、事件の容疑者とされた被害者の友人・羽鳥が犯人に違いないと今でも信じており、鳴沢に事件の再調査を強要するのだが…。事件に興味を持った鳴沢は、遺品の中にあった父親の日記を調べたり、当時の関係者へ直接会いに行ったりするのだが、そこに思わぬ妨害が…。
第一作から続いていた、父親との確執が、こういう形で終わるとはね…。前作で、父親が病気を患っているという話は登場したが、直接の再会シーンはとうとう物語の中では描かれなかったね。一応、人並みの行動をとったらしいというのは、本文内で、鳴沢が回想するのだが…。
で、亡き父親を想いながら、その父親が唯一、解決できなかった事件を捜査することになるんだけど…今回は後半で、1作目に登場した大西刑事が、成長して再登場するが…警察官でありながら、警察の正規の捜査権を持たずに、一人でコツコツと捜査をするという、めちゃめちゃ地味なハードボイルド的展開を見せる。シリーズものとして大きく逸脱した設定にならずに、変化にとんだシュチエーションに仕上げているのはさすが。
4作目に比べると事件自体も、それこそ地味な感じであるし、鳴沢が聴き込み調査を行っていく過程で、事件の真実や真犯人もある程度、予想ができるのだが…いつもながら急加速するクライマックスは一気に読ませられるね。
大西以外にも、再登場のサブキャラがあるんだけれども、他の作品ほど不自然な偶然性は少なかったかな?地味だけどドラマとしては上手なまとまり。意味深に鳴沢を妨害する警察学校同期(しかも小学校の同級生)の安藤刑事の事件との関わりが割とショボかったのだけは、なんだかなぁって思ったけど…。
個人的採点:70点