孤狼 刑事・鳴沢了 著:堂場瞬一

堂場瞬一:著
中央公論新社 ISBN:4-12-204608-4
2005年10月発行 定価900円(税込)

3冊続けて読んだので、ここらで一旦、小休止…なんか別の作品でも読んでみようかなって思ったんだけど、あらすじ読んだら面白そうだったので続けて読み始めてしまった刑事・鳴沢了シリーズの第四弾。この作品から、タイトルの後ろに“刑事・鳴沢了”って入るようになったんですね(今まで、読んできた作品も最近の増刷版では、シリーズ名入りのタイトルに統一されてる)。
青山署の刑事、鳴沢了は…突然、本庁の理事官から呼び出され、特命捜査に駆り出される。その内容は、一人の刑事が自殺し、それに関連して一人の刑事が行方不明になっているのだが…その行方不明になっている刑事をなんとしても探し出せということらしい。面識のなかった練馬北署の今とコンビを組まされ、状況も把握できないまま捜査を開始するのだが、理事官とは別グループからの妨害が!私立探偵になった本同僚の小野寺冴や恋人の内藤優美まで巻き込み、事件は思わぬ展開へ…。
過去のサブキャラ総動員…しかも偶然多すぎ!人間関係が極めて少ないくせに、なぜか鳴沢の知り合いばかり事件に関わりすぎ!というツッコミも入れたくなる箇所がたびたびあるものの、事件の内容もミステリアスになり、不完全燃焼に感じた前作よりも数段と面白くなる。ついでに、過去の作品に関連することがらもいろいろとちりばめられており、シリーズものとしてもますます面白くなってきた。
特に「破弾」での相棒だった美人刑事の冴が、私立探偵となり再登場。おいおい、前作でいい仲になった子持ちの恋人いるのに、昔の元カノも出てきちゃったよと、色恋が苦手なはずの鳴沢の恋愛模様も、シリーズを重ねるごとにだいぶ様変わりしてきている。
今回の相棒役、巨漢で大食らいの今刑事とのコンビぶりも面白く、二人で警察組織の派閥争いという暗部を、どう突き崩していくかが読みどころ。正義をとるか、組織をとるか…過去のシリーズを踏まえ、悪事は許さないが、世渡りが少しだけ上手になった鳴沢から、ますます目が離せなくなる。今まで読んできた中では一番面白かった。
個人的採点:75点