破弾 著:堂場瞬一
破弾
堂場瞬一:著
中央公論新社 ISBN:4-12-204473-1
2005年1月発行 定価900円(税込)
雪虫に続き、堂場瞬一の鳴沢了シリーズ…第二作目を読み終わる。前作の最後で、新潟県警を辞職した鳴沢が警視庁のショカツ刑事になって物語がスタートする。
ある事件をきっかけに、新潟県警を辞めた鳴沢了は、刑事の道を捨てきれず、結局…東京に出て、また刑事の道へ進み、警視庁の多摩署へ配属された。しかし、同僚たちからは疎まわれ、最近は資料室に閉じ籠りっぱなしで事件の捜査が回ってこないのだが、そこへようやくお呼びがかかったのはホームレスの傷害事件。しかも、鳴沢同様に署内で倦厭されている女刑事の小野寺冴とコンビを組まされることに。さらに肝心の被害者が行方をくらますという珍事が。捜査を進める二人の前に、元過激派や公安の姿がチラつくのだが…。
舞台が新潟から東京に変わったというのも新鮮だし、前回は新人のひよっこ刑事と組まされ、そのやり取りがなかなかコミカルで面白かったのだが、今度は鳴沢同様のちょっと偏屈な美人刑事が登場。前回は初恋相手との、一昔前の中学生みたいな恋愛も繰り広げた鳴沢だったが、はてさてヒロインと相棒役を兼ね備えた美人刑事とどうなっていくのかも読みどころ。
事件の方は、なんだか高村薫の「マークスの山」(小説は読んでないんだけど、映画で見た)みたいな、学生運動絡みの過去の因縁が大きく関わってるようだと。そんな古い話がなんで今更?となるのを、前作「雪虫」での経験と照らし合わせて、説得力を出している。もちろん、前作の重さもしっかりと引きずっており、自問自答する鳴沢の心情もよく描けている。
物語の中に出てきた登場人物が、事件の真犯人でありという意外性なと、推理小説的な味わいは増した感じがするのだが、ただ、そんなに重たいもん背負っちゃうの、鳴沢?みたいな部分はちょっとやり過ぎかなと思ってみたり。どこへ行っても報われないなぁ、この人(笑)一番の不思議だったのは、なんですぐに警視庁の刑事になんかなれたんだろうか?という疑問だったが、そういうのも読み進めていくうちにさりげなく語られており、そこは興味深く読めた。
個人的採点:70点