ポケットは犯罪のために 武蔵野クライムストーリー 著:浅暮三文
ポケットは犯罪のために
武蔵野クライムストーリー
浅暮三文:著
講談社 ISBN:4-06-182500-3
2006年10月発行 定価840円(税込)
もともとは短編作品だったものを、謎の人物の独白による幕間を挿入することにより、1本の長編のように仕立てた、浅暮三文らしいトリッキーな作品。表紙のイラストはちょっといかがわしい感じが強いが、中身はそんなでもない。
中央線専門の置き引き常習犯の男が、網棚の上から鞄を拝借してきたのだが、中身は原稿用紙の束だった。どうやらミステリーとよばれる類の小説で、武蔵野の面影が残るとある街で起きた、様々な事件を題材にしたものだった。男は、奪った原稿を…持ち主に、引き取らせようと…その小説をヒントに、持ち主探しを始めるのだが…。
短編の一つ一つは、オーソドックスな謎解きミステリーとしてけっこう楽しめる。犯罪者が自分の犯した罪を告白しながら、オチに向かっていくタイプのものと、日常生活のなかで、些細な疑問にぶつかり、とんでもない事件が起きたいたというタイプ。
あと、ラストにあった「五つのR」という、老人の昔話の真相を読み解く話は、ほかの作品と並べると、ちょっと異質で“武蔵野クライムストーリー”からかけ離れた感じがするのだが、短編としての発表時期が一番早いというのと、大まかな仕掛けに使うのに、最後のパーツとして必要だったんだろうなぁって印象を受けた。
このミステリー短編を、こんなオチにという奇天烈などんでん返しがラストに!ただ…今の時期にタイムリーなオチだったかなって、ちょっと思った。
個人的採点:70点