クラムボン殺し 著:中島望
クラムボン殺し
中島望:著
講談社 ISBN:4-06-182501-1
2006年10月発行 定価903円(税込)
中島望の「クラムボン殺し」…クラムボンとは、小学校でも教わる、宮沢賢治の作品に登場する正体不明の存在で、アメンボなど微生物ではないかとか、いろいろな説がある。作品の主人公の一人が小学校教諭であり、事件が起きるのが小学校内。作中の授業シーンで、クラムボンについて語っている。
私立小学校の女性教師七浦陽子は、一人暮らしの自宅に何者かが侵入した痕跡を見つけ、ストーカーではと疑う。世間では、陽子と同年代の一人暮らしの女性ばかりを狙った“眼球抜き連続殺人”が起きており、犯人は捕まっていない。陽子は自分が次の被害者になるのではないかと思い…チラシを見た探偵社に調査を依頼するのだが、その直後に、勤務先の小学校で、猟奇殺人が発生する。
著者初の本格ミステリーだという「クラムボン殺し」…眼球くりぬきの連続猟奇殺人に、見立て殺人と本格要素は充分だが、著者らしい、バトルホラーっぽい要素も残っており、生粋の本格派に認められるかどうかは微妙な線…?
思わぶりせな犯人の独白なども挿入され、けっこう本格としてはフェアに描かれているので、真相にたどりつくのは容易。どんでんがえしも用意されているが、そちらも、予想の範囲内で驚きは少なかった。
小学校の女性教諭が殺人鬼におびえるなど、冒頭はかなり期待させられたのだが…ガチガチの本格推理に比べると、ちょっと物足りなかった。エンターテイメントとしては面白くは読めるので、これで、綾辻や島荘のような先達の本格推理作家のようにあっと驚く結末が用意されていたら、本格推理として満足できるのに、ちっともったいない。
個人的採点:65点