格闘する者に○ 著:三浦しをん | 105円読書

格闘する者に○ 著:三浦しをん

格闘する者に○

三浦 しをん:著
新潮社 ISBN:4-10-116751-6
2005年3月発行 定価500円(税込)









三浦しをんを読むのは、エッセイも含めて4冊目だったかな?これがデビュー作なのだそうだが…くせのない文章でスラスラと読め、なおかつ個性が出ているということで、一番読みやすくて面白かった。

就職活動の真っ最中なのにマイペースな大学生の藤崎可南子…漫画が好きというだけで、漫画雑誌の編集者になれたらいいなぁと思い、片っ端から出版社の試験を受けるのだが…結果は思わしくない。さらに義母と半分だけ血の繋がった弟と暮らすわけありな家庭事情をはじめ、書道家の老人と付き合ったりと、意外と忙しい毎日を過ごしている…。

可南子の漫画オタク&妄想癖は、そのまま…著者本人?エッセイと似たテンションで暴走してますね…。てっきり、自分をモデルにした私小説的な物語なんだとばかり思っていたら…複雑な家庭の事情、継母とのギクシャクとした関係などいかにも少女漫画好きの作者らしい設定が冴えるね。

主人公が、けっこうパープリンなので、最初の30ページくらいは、頭の中でもっと庶民的なキャラを想像していたんだけど(家庭が複雑なのは最初のほうで描かれていたが)…実はけっこうなお嬢様で、意外と物語が深くて、そういうところが面白かった。

就職活動に対する不平不満や理不尽さ、妄想とあわせて、かなり茶化してるあたりもユニークであり、自分も学生時代に同じ様なこと考えたなぁとか懐かしく思ってしまう。自分は最終学歴が専門学校だったので、明らかに有名大学の学生と差別されてるのとか…面接でも、よく感じられましたね~。あと、自分も無理は承知で、有名玩具メーカーや出版社なんかの会社説明会や試験を受けに行って…雰囲気だけは楽しんだことがある。主人公が憧れの出版社で、目をキラキラさせてしまう反面…嫌な面接官に遭遇したり、なんか内情を垣間見ちゃったりして減滅瞬間とか…もろ共感できる。

就職活動くらいで、クヨクヨするなって思いが伝わってくるんですけど、この不景気な世の中、それも三十路過ぎてチャランポラなフリーター風情の自分は、けっこうしんどいですよねと、ちょっぴり真面目なことも考えながら読んでしまいました。三浦しをんのエッセイなんか読むと…ほんと、途中までは自分と似たような生活してたオタクなのに…今ではベストセラー作家、直木賞作家ですからね、羨ましい(爆)






個人的採点:70点