ズロチ 著:小峯隆生 | 105円読書

ズロチ 著:小峯隆生

ズロチ

小峯隆生:著
徳間書店 ISBN:4-19-891451-6
2001年2月発行 定価660円(税込)









雑誌プレイボーイの編集長を経て、映画評論から、映画監督、ハリウッド映画出演(笑)までこなすマルチな人…色々な映像作品なんかで、ガンアドバイザーをやったりもしている、ジェームズ・キャメロンのマブ達コミネちゃんこと小峯隆生のアクション小説「ズロチ」を読んだ。文庫書き下ろしだが…今現在は絶版。ただしAmazonのマケプレでは1円から出品されている…。

鄙びた炭鉱町での生活を嫌い、札幌に出た幼馴染の三人の若者、洋一、宮下、吉田。都会に出てからはそれぞれバラバラの道を歩んできたが…変化のない日常に見切りをつけようと、再集結。宮下が仕込んできた、ノンバンクの現金強奪を実行するために、まずは銃の密売組織から武器を奪取。武器の確保は成功したものの…密売組織から終われる羽目に。仕方無しに現金強奪の計画を早め強行したのだが…なんと盗んだ金は、ズロチと呼ばれる価値のない外国紙幣だった。しかし、その紙幣はロシアマフィアがマネーロンダリングに使う重要アイテムであり、三人はロシアマフィアからも追撃を受ける!?

今まで、いくつかこの作者の本を読んでいるが…それこそハリウッドスターへのインタビュー集だったり、映画の解説文なんかはマニアックな知識が豊富なので物凄く面白いのだが、ことアクション小説に関しては微妙(笑)自身のホームページで、知り合いから「アクションは大沢在昌さんよりすごいけど、全体的には…」と酷評されたと語ってるくらいだしね、自分もそう思った。

でも、「ズロチ」はなかなか面白かったよ。文章もだいぶ、上手になったようで…キャラクターの描きわけなんかもちゃんと出来ていた。それこそ初期作品の「デコイ」とか「パオさんとの復讐」なんか、オタクな銃器描写は優れているものの、映画の脚本を読んでいるようなそっけない文章で味気なかったんだけど…今回はしっかりとスリリングなエンターティメント小説になっていた。

アクションに次ぐ、アクション…ピンチの連続で、とにかく飽きない。確かに、素人の未成年三人が、元軍人、元KGBのロシアマフィアを相手に互角、いやそれ以上の能力で戦いを繰り広げるというあたりはツッコミどころかもしれん。ロシアマフィアの幹部が…大真面目に“モサドの工作員”と勘違いしているところなんて、シリアスな展開ながらユーモアもけっこう感じてしまう。でも、そういうところを全体的なテンポと、お得意のミリタリー描写でしっかりとカバーし、最後まで読みきれる。

大沢在昌と比べるのはおこがましいかもしれんが、デビュー当時、永久初版作家と呼ばれていた頃の大沢在昌レベルには近づいているのでは?(笑)






個人的採点:65点