閉ざされた夏 著:若竹七海
閉ざされた夏
- 若竹七海:著
光文社 ISBN:4-334-74017-0
2006年2月発行 定価650円(税込)
若竹七海の「閉ざされた夏」を読む…コージーミステリが得意な作者だけに、語り口はコミカルだが、人間関係がなかなかドロドロ(笑)そういうのを感じさせないで、ヌボ~と物語は進んでいくが、最後はやたらとどんでん返しが多し。ハードカバーで発表後、既に他社でも文庫化されているものの再文庫化なので…作品自体は古めだが、あまり気にしないで読める内容。
東京都新国市にある、作家・高岩青十の文学記念館に勤める学芸員、佐島才蔵…他の同僚たちとも和気藹々と過ごせる環境の仕事場だったのだが、奇妙な放火未遂事件が相次ぎ、雰囲気は一変…。さらに、才蔵たちが企画した展示会の最中に、同僚の一人が、施設内で他殺体となって発見された!事件の背景には、青十に関する新事実の発見が関係している模様だ…。才蔵は同居しているミステリ作家の妹・楓らと共に事件の真相解明に乗り出す!
現代で起きる事件と、作家の生い立ちや家族構成、人間関係を把握していないと…物語に面白みがないので、登場人物を覚えるのに最初はちょっと苦労したね。
鯛焼きに入っているあんこが少なくなったっていう、どこでにでもありそうな、ほのぼのとした日常的な話題から…だんだんと愛憎渦巻くドロドロとした展開へ話を持っていくあたりの描き方が上手い。
もっとギャグ調でコミカルなものを想像していたので…後半はけっこうシリアス路線。前半のほのぼのが、後半では一変してしまうところが、この作品、この作者の持ち味なんだろうね…人間の幸せなんて儚いもので、長く続かないだなぁって、しみじみと思ってしまいます。
個人的採点:65点