模倣の殺意 著:中町信
模倣の殺意
- 中町信:著
東京創元社 ISBN:4-488-44901-8
2004年8月発行 定価735円(税込)
ベテランミステリー作家、中町信が30年以上前に発表したデビュー作を改稿して文庫化したものだそうで、今までにも「新人賞殺人事件」「新人文学賞殺人事件」などのタイトルで発刊されている。恥ずかしながら、この著者の作品は初めての挑戦。宝島社のこの文庫がすごい2005年版のミステリー部門で、上位にランクインしていたので、気にはなっていた作品。
七月七日午後七時…新進作家の坂井正夫が青酸カリで服毒死を遂げた。遺書などは見つからなかったが、自殺として処理された。坂井の知り合いで、女性編集者の中田秋子は…かつて坂井の部屋で出くわした美女を怪しみ、事件に関わりがあるのではないかと探り始める。一方、ルポライターの津久井伸助も坂井の死に疑問を持った。実は坂井の発表した小説に盗作疑惑が持ち上がったのだ。津久井は、生前の坂井と確執のあった編集者の柳沢を怪しみ、調査を開始する…。
時代設定なんかは、初回発表当時のものなので…アリバイトリックなどに使われる小道具がレトロだったりもするのだけど…オーソドックスな推理小説として、全体的に古さは感じないで読める。
読んでいる途中で、作品に仕掛けられているだろう違和感に気づき、どんでん返しな結末はある程度の予想はつくものの、今とは違って30年以上前にこういうトリックの小説があったというのはちょっと驚き。最近の結末どんでん返し系ミステリのように、最初から何かあるぞと疑ってかからないで、素直に読み始められるのが、なんかいいね。自分の推理が当たっているのではないかと思いながら、どんどんページを読み進めてしまうよ。
盗作を題材にしているあたりは、どんでん返しが得意な某推理作家の代表作(巻末の解説を読んだら、実際の作品タイトルを出したら、それだけでネタバレになっちゃうと書かれていたので、自分も伏せておきます)とかにも似ているかなと思ったし、作品内に出てくる、ある事件の真相が、最近読んだ(といっても、その小説自体は何年も前のものだが)某ハードボイルドのテーマにも酷似していた。でも何度も繰り返すように、書かれたのは30年以上前というのがミソでしょうね。
推理小説として素直に楽しめる。難し過ぎず、適度な驚き…推理する楽しみ、普段ミステリを読まないような人への推理小説の入門編としてもお薦めできるかもしれない。
個人的採点:70点