刑事 雪平夏美 アンフェアな月 著:秦建日子
刑事 雪平夏美 アンフェアな月
秦建日子:著
河出書房新社 ISBN:4-309-01779-7
2006年9月発行 定価1,680円(税込)
自分が前作の「推理小説」を読んだ時は、けっこうこのブログで酷評した んですけど(笑)、ドラマ化されて、文庫本がベストセラーになってた。で、調子に乗って小説第二弾に映画化ですか?昨年末発表の宝島社、このミステリーがすごい2007年版では、ベスト20にこそ入っていなかったが、ランク外…13点以上で、山田正紀や垣根涼介と一番下に並んでいたし、各ネット書店の読者レビューでは意外と好評価。
生後3ヶ月、0歳児の幼児が誘拐されたと、110番通報してきたシングルマザーの母親。連続猟奇殺人の犯人を射殺し、なんとか事件に決着をつけたばかりの警視庁捜査一課・強行班の雪平夏美は…上司の命令で、特殊班の担当する誘拐事件の捜査へ合流するのだが…。
この間、打海文三がけっこう前に書いた「時には懺悔を」を読んだなかりだったからなぁ、幼児の誘拐という題材が似てるし、あっちと比べると、相変わらず中身の薄さが目立つ。だから、この人の本は映像用なんだって(^^ゞ前回の小説も、結局は…ドラマ化するための、企画書みたいなもんだったわけで…魂胆みえみえ。そのくせ、本職の推理作家を愚弄するようなことを偉そうに語ってるのが、嫌味に感じたんだよね。
で、今回は…そういう部分は自粛しているのか、自分が接しているTV業界内のことを皮肉ってたけど(笑)企画書を通すには、シンプルに分かりやすく、字をデカくしてインパクトをつけるとか云々…そういった類いの説明が出てくるんだけど、本文内に、真っ黒いページに白抜きの字でデカデカと短い文章を書いて、レイアウトで読者に何かを訴えかけようとしたりする姑息さが…いかにも業界人っぽくて、鼻に付く。文章力のなさをこういうところでカバーしてるよね。
それでも、脚本家さんなので筋立てはそれなりに飽きないように、美味しく考えられてるんだけど、表面上しか見えてこないのでキャラクターに入り込めないし、文章で読んでると説明的すぎる構成のせいで、謎が謎になっていない感じで…ラストでの驚きが少ない。
まぁ、ドラマから入った人には、この程度の作品で満足なんだろうなぁって感じの出来ですよ、はっきりいって今回も…。読みやすい=中身がない=面白いと感じる。それで本が売れて、ランク外ながら、このミスにも票が入っちゃうってことは…やっぱりメディアの力は大きいですね。300ページ以上あるハードカバーなのに、読書なれしてる人なら2時間程度で読めちゃうような作品…小説ではなく、今回も脚本に近いです。ハードカバーの定価じゃ、自分は買いたくないですね。古本だったら、暇つぶしになりますよ。
個人的採点:55点