ストロベリーナイト 著:誉田哲也
- ストロベリーナイト
誉田哲也:著
光文社 ISBN:4-334-92486-7
2006年2月発行 定価1,680円(税込)
最近、お気に入りの作家の一人である誉田哲也の作品…帯には朱川湊人、笹本稜平といった人気作家の推薦文がズラリと並び、傑作と絶賛。これは期待が高まると読み始めたのだが…。
姫川礼子は、ノンキャリアでありながら…27歳の若さで警部補まで昇進し、現在は警視庁捜査一課殺人犯捜査係の主任に抜擢されている女刑事。葛飾区の都立水元公園近くで発見されたビニールで包まれた惨殺死体…何故、死体はこんなにも猟奇的な施しがされていたのか?そして何故、放置されたままだったのか?礼子の推理が事件を思わぬ方向へ誘っていく…。
誉田哲也なので、自分の好きなジャンルだったし、安定した面白さはあるんだけど…同じ著者の近作である、超大作の3部作「ジウ」シリーズとどことなく、作風がかぶってるんですよね。「ジウ」シリーズから、特殊部隊やらアクションといった要素を省いて、個性豊かな刑事たちが、事情聴取して、証拠品探して、コツコツと事件を捜査するという…オーソドックスな警察推理小説のタイプになった感じ。
主人公の一人である女刑事の姫川礼子のキャラが…「ジウ」の門倉美咲に似てる。美人で、能力とガッツもあるんだけど…周囲のベテラン刑事から疎まわれちゃったり。本人はあまり意識してないようなのだが、推理というよりはプロファイリングという名の山勘で(笑)…事件やピンチを切り開くのが得意。彼女をサポートする形で、公安上がりの頑固刑事や、若手刑事が独自の捜査法で事件解決の糸口を探すというのが基本的な流れ…。
各章の合間に、犯人と思われる人物の、犯行へ至るまでの経緯なんかも挿入されているのだが、殺人鬼と化すまでの壮絶な生い立ちが描かれていく。このあたりに、ちょっとした推理小説的な仕掛けもあるが…真相を見破るのは意外と楽。他にもどんでん返しな真相があるんだけれども…、こちらも途中の描写で真相にたどりつけるので(もちろん、姫川礼子同様の山勘だけど)、導入部分、事件の真相に比べたら、驚きが弱いように感じる。もっと想像を絶するような真犯人の登場を願いたかった。
実は主人公の姫川礼子にも隠された過去があるらしいという描写で前半から引っ張る。このあたりは、犯人の心理描写なんかと対にして、わざと比較させてるんでしょうね…。警官を志すきっかけとなった、裁判所のエピソードが、ちょっといいシーンで、グっときてしまった。
個人的採点:65点