時には懺悔を 著:打海文三
時には懺悔を
打海文三:著
角川書店 ISBN:4-04-361501-9
2001年9月発行 定価620円(税込)
いつも、打海文三を読むと、内容の濃密さに、ミステリーはミステリーでも、さらに細分化すると、どのジャンルに当てはまるのだろうかと考えてしまうのだけど、今回はうらぶれた中年探偵、佐竹がメインの主人公となるので、ハードボイルドでいいだろうって感じですね(笑)探偵が謎の女を追いかけるなんて、ハードボイルド以外の何ものでもないって感じだけどさ(笑)1994年に発刊された作品の文庫化。
大手探偵社アーバンリサーチの元探偵、佐竹は独立して、今では個人で事務所を構えているのだが、昔の上司からの頼みで、探偵スクールの教官の代理を頼まれてしまった。生徒である中野聡子と共に、知人・米本の探偵事務所へ盗聴器を仕掛けるという訓練をしていたのだが、聡子が事務所に侵入しようとしたところで…事務所内に米本の死体が転がっているのを発見してしまった!思わぬ形で殺人事件に首をつっこんでしまった佐竹は、聡子と共に事件を追う!生前の米本に匿名で依頼を持ち込んだ謎の女の存在、さらに彼女が探しているらしい障害児にはどんな秘密が隠されているのか?
これがアーバン・リサーチの面々が活躍するシリーズの1作目なんだとか…過去に何作かこのシリーズを読んでるけど、順番はメチャクチャ。
普段、接することのない障害を持った人たち、実態を克明に描きつつ、壮絶な物語なのに、暗くなりすぎず、時にはユーモラスに感じる。障害児についての知識なんて全然ないので、最初はとまどいつつも…次第に親しみを感じる作中人物たち同様に、読んでいることらも共感を覚えだす。それこそ、ドキュメンタリー番組でも見ているような、リアルな姿が頭に思い浮かぶ。
本筋のとっかかり程度にしか感じなかった探偵殺しも、後半で急展開。主人公の佐竹も含めて…大人、親だって完璧じゃないんだ、正常な人間だって、何かしらの欠陥を抱いて人生を歩んでいるんだというのが、作品全体から伝わってくる。探偵たちの哀愁漂うハードボイルドな生き様が、そのまんま人間の人生にも見えてきてしまうなぁ。
個人的採点:75点