背の眼 著:道尾秀介
背の眼
道尾秀介:著
幻冬舎 ISBN:4-344-00731-X
2005年1月発行 定価 1,890円(税込)
昨年末に発表された各社のミステリベスト10では、何作も作品が上位にランクインしていた道尾秀介を初めて読む。これは2年前に発刊されたホラーサスペンス大賞の特別賞受賞作品で、デビュー作。既に、新書版も出ているようだが…自分が入手したのはハードカバー版。
作家の道尾は、一人で出かけた旅先、白峠村の河原で奇妙な声を耳にし、あまりの恐ろしさに、東京へ逃げ帰ってしまった。そのことを相談しようと、大学時代の友人で、“霊現象探求所”なる事務所を構える真備庄介の元を訪れる。そこで、真備から見せられた、被写体の背中に二つの眼が写る心霊写真が、実は何か関連しているという。その写真は全て白峠周辺で撮影されたものであり、その被写体の人物が全て自殺しているという事実…さらに白峠では児童連続失踪事件も発生していた!道尾は事件の真相を求めて真備と、女性事務員・凜と共に再び白峠へ向かう!
“心霊現象を肯定的に扱いながらも(中略)基本的には本格ミステリの構造”と巻末に載っていた選評で、ホラーサスペンス大賞の選考委員の一人である綾辻行人が語っている言葉、そのものズバリだなぁって感じで、ジャンルとして、ホラー小説と推理小説の境界線が非常に曖昧(うちのブログではホラーサスペンス大賞なので、ホラーに区分しておきます)。ホラーとしての怖さも味あわせながら、推理小説的な謎解きでカタルシスが味わえる。ぶっちゃけ、京極夏彦のパクリなんだけど、そこはオマージュとして捉えて、その部分を評価すると、綾辻行人は誉めていた。
自分は京極夏彦をそんなに読んでないので、その部分は気にしないで読めたんだけど…やはり選評で指摘されていた“出版までに無駄を削ぎ落とす”というのが、まだまだだなって感じで、ちょっと残念。後半で推理小説的な種明かしがあるので、意識的に読者を煙に巻こうとしているのか、同じような会話を何度も繰り返したりして、ちょっとウザい。最初から最後まで恐怖を持続させ、それでいて本格ミステリ的な真相で着地したら、もっと良かった。
デビュー作でこのレベルだったら、今後も読んでみたいと思える作家で、これ以降に書かれた他の作品をミステリファンが評価しているのもうなずける。著者の「向日葵の咲かない夏」を、やはり100円コーナーで見つけてあるので、近いうちに挑戦してみるつもり。
- 新書版 背の眼
幻冬舎 2006年1月発行 定価1000円(税込)
個人的採点:65点