疾風ガール She is crazy...yet cute! 著:誉田哲也 | 105円読書

疾風ガール She is crazy...yet cute! 著:誉田哲也

疾風ガール
She is crazy...yet cute!

誉田哲也:著
新潮社 ISBN:4-10-465202-4
2005年9月発行 定価1,470円(税込)








個人的にハズレなしの誉田哲也…今まで読んできたのは、ホラーアクションだったり、警察アクションだったりとミステリー的な作品が多かったのだが、今回は美少女ロックンローラー&元バンドマンの芸能スカウトマンのお話。厳密的に言えば、この作品もミステリー風な部分もあったりするのだが、あくまで風程度なものなので、ミステリーという枠組みに当てはめないで、普通に文学作品と捉えたほうが、いいんじゃないかと思いますね。

元バンドマンの宮原祐司は、自分の夢に挫折し…バンド時代の仲間から誘われた芸能プロダクションで、スカウトマン兼マネージャーをやっているのだが…そっちでも成績は芳しくなかった。ある日、仕事の関係で訪れたライブハウスで一人の少女とめぐり合うまでは…。ブレイク寸前のアマチュアロックバンド、ペルソナパラノイアのギタリスト柏木夏美…バイトをしながら仲間たちとバンド活動をするのが大好きな彼女。このまま今の仲間たちと一緒にずっと音楽が続けられたらいいなと思っていたところへ、芸能マネージャーを名乗る男が現れた。さらに、同じバンドのヴォーカリスト薫が突然の自殺をしてしまったことから…状況が一変する。

アマチュアバンドが、華々しくプロの世界に飛び込んでいく話なのかなと思っていたら…バンド仲間の自殺事件を境に、自殺の真相探るというような、ミステリー的な展開に。実は、ヴォーカリストの薫くんには謎だらけ秘密がありましたと。本当に自殺なのか?何が原因なのか?と…夏美と、たまたま事件に巻き込まれてしまった祐司のデコボココンビが、ああでもない、こうでもないと漫才コンビのような掛け合いと珍道中を繰り広げるのだけれど…作品の根底にあるテーマは、挫折を味わった2人が、どうやって立ち直っていくかっていうのが焦点だからね。祐司は夏美を自分の手で育てたいという夢に突き進み、夏美はやっぱり音楽で頂点を極めようとするっていう部分が大事なわけです。

女の子のロッカーっていうと、「NANA」のナナとかさ、「新宿鮫」の晶ちゃんなんかを思い出すんだけど…それと同様に音楽をやってると元気百倍の夏美ちゃんのやんちゃっぷリが、読んでいてけっこう爽快で楽しいですね。音楽的な才能はピカイチで、オーラがバリバリでてるんだけれども…世間知らずで、わがままで、ちょっと無鉄砲なところが、読者としては、なんかハラハラしてしまい、応援したくなっちゃうような愛くるしいキャラクターに描かれているんだ(笑)去年文庫で読んだ、ヒキタクニオの「ベリィ・タルト」(芸能プロのスカウトされた美少女のお話)に出てきた、アイドルを目指すリンちゃんみたいな部分もあってさ…もっと、今後の活躍を読んでみたいなって思わせるキャラクターになっていた。続編を希望だよ。

音楽的な専門用語も、説明調にならない程度に上手に解説を加えているし、文章のリズムもよく一気に読破してしまった。誉田哲也って、本当にハズレないなぁ、自分は。最近のお気に入り作家の一人です。






個人的採点:70点