スイート・リトル・ベイビー 著:牧野修
スイート・リトル・ベイビー
牧野修:著
角川書店 ISBN:4-04-352201-0
1999年12月発行 定価560円(税込)
牧野修のホラー小説「スイート・リトル・ベイビー」を読む。表紙には第6回日本ホラー大賞長編賞の記述あり。もう7年近く前に出た本だけど…現在でもしょっちゅうニュースや新聞で見聞きする、児童虐待がテーマになっている。
ボランティアで児童虐待の電話相談をしている保健婦の秋生。彼女自身もかつて、育児ノイローゼにかかり悲しい出来事を経験しており、その経験からボランティアに参加していたのだ。ある日、数年前に息子を虐待した主婦、紀子から久しぶりに相談の電話が掛かってきた…。一時は虐待もなくなり、家庭も円満だったらしいのだが、なにやら夫が怪しい行動をとっていると。夫婦仲が原因で再び虐待が始まるのを恐れた秋生は、紀子の相談に応じてしまうのだが…そこから思いもよらぬ出来事に巻き込まれていく。
今までは、どちらかというとノンストップスプラッターな牧野ホラーばかり読んでいたので、前半で語られる児童虐待の実態を、壮絶に描いていくところなど、ホラーというものを忘れて真剣に読んでしまう。まだ、自分は結婚もしていなければ、子供もいないので…子育ての大変さっていうのはさっぱり理解できないのだが、こういう物語を読んでしまうと、自分に子育てなんかできるのだろうか?自分は何かの拍子に虐待へ走ってしまわないだろうか?と…ある意味、恐怖に感じてしまう。幼児への折檻死とかさ、最近も類似の事件が報道されると…「何を考えてるんだ、親は!」と無責任にも怒りをあらわにしてしまうが、いざ、自分が子育てに直面したら…自分もその少数の非常識な親の仲間に入ってしまうのではないか?
で、この本もいつものように古本で買ったんだけどさ…前の持ち主が、本文のいたるところに赤線でマーキングしてたんですよ。それも、主人公が過去に犯した児童虐待を詳細に語る部分とかね。それが、なんだか妙に生々しくてね、何を考えて、ここにマーキングなんてしたんだろうなんて思い出すと、余計に怖さを感じてしまいました。
前半からチラっとづつ語られてきた恐怖の真相…それがラストではホラー的なオチのつけかたがちゃんと出てきてね、非常に読後感が悪い展開へ。面白いと表現するような作品ではないが、凄く惹き込まれる物語だったのは確かです。
個人的採点:70点