ベリィ・タルト 著:ヒキタクニオ
ベリィ・タルト
ヒキタクニオ:著
文芸春秋 ISBN:4-16-770201-0
2005年6月発行 定価580円(税込)
「凶気の桜」や「鳶がクルりと」など映画は見たことがあるのだけど、本をちゃんと読むのは初めてだったヒキタクニオの作品。元ヤクザの芸能プロ社長が、偶然出会った、少女をアイドルに育て上げようとする話。2002年にハードカバーの単行本で出た作品を文庫化したもの。
家出中の美少女リンは、元ヤクザで、芸能プロの社長・関永と出会い、「アイドルにならないか?」とスカウトされる。芸能活動に反対する母親の横槍を交わしつつ、レッスンで鍛え上げたリンは、想像通り注目を浴び始めたのだが…そこに大手の芸能プロが目をつけ始めた…。
そういう噂のある芸能プロダクションって実際にあるらしいからねぇ(笑)…まぁ、いい感じにフィクションであり、いい感じにリアルな物語です。華やかなアイドルたちの過酷な裏側を描きつつ、それに群がる、金の亡者と化した大人たちやファンという名の変態をシニカルに見つめるているのが面白い。
映画の「凶気の桜」なんかでも、極道社会を物語に取り込んでいたので、この物語も、切った張ったの血なまぐさい話も出てきたりするのだけれど、個性的なキャラクターと、コミカルな文体で、そういう雰囲気を抑えつつ、テンポ良く読ませてくれる。「凶気の桜」(映画しか見ていないけど)のように、登りつめた後に、どん底に落ちたりもするんだけど…もう一度、希望を見出せる内容になっていくので、良かったですね。 最後はリンのその後を読んでみたいなって気持ちにさせられた。
個人的採点:70点