犯人に告ぐ 著:雫井脩介
犯人に告ぐ
雫井脩介:著
双葉社 ISBN:4-575-23499-0
2004年7月発行 定価1,680円(税込)
毎年恒例の宝島社のこのミス…本年度版も最新のランキングが発表されて書店でチラリと立ち読みしてきたけど、読んでない本ばっかだった(笑)で、これは2年前、前々回のこのミスで、8位にランクインしていた作品だ。マスコミを使って、殺人犯と対決する神奈川県警の警視のお話。
身代金目的とした児童誘拐事件が発生…捜査の陣頭指揮をとった神奈川県警、特殊班の巻島だったが、大失態を犯して左遷されてしまう。6年後、川崎市内で連続児童殺害事件が発生。犯人の足取りが全くつかめない捜査陣は、県警本部長のアイデアで、大々的にマスコミを利用した公開捜査に踏み切ることに。事件を指揮する担当捜査官として、巻島に白羽の矢が立った!
作品の前フリとなる誘拐犯とのスリリングな駆け引き…で、どうなっちゃうのかなって思ったら、中途半端な幕切れで、途中で別の事件へ。で、過去の事件を引っ張りつつ…新しく起きた児童連続殺人事件の捜査がスタートする。導入部分のつかみ、マスコミを利用しての犯罪捜査という、メインテーマのアイデアの奇抜さに加え、さらに刑事たちの派閥争いや、足の引っ張り合いに…エリートキャリアの暴走と、畳み掛ける勢いで、一気に読ませるのだけれども…終盤で肝心の犯人逮捕劇のあたりになると、話がやや失速してしまうのが、ちと勿体無いかなと…。地道な捜査が実を結ぶというような、行き当たりバッタリな偶然もリアリティのうちかなと強引に納得してみたりもするけどね。
例えば、両方の事件がどこかでクロスするのではないかと、もっとドラマチックな展開を望んでいたのだけど…。確かに、過去の事件も重要な要素として物語の終盤で関わってくるんだけど、ちょい蛇足気味に感じてしまった。
犯人逮捕の詳細な過程を描くといよりは、捜査陣とマスコミとの関係、一般市民の犯罪に対する考え方あたりが物語の焦点でしたからね…ブラックでシニカルな部分も含め、そこがリアルに面白く描けていたから、満足できる。最近も交際相手の個人情報を勝手に調べちゃって、捕まった警察官がいるくらいだから(何気にこの話も神奈川県警でしたね)、女を口説きたい一心で、身内が捜査情報をマスコミにリークしちゃったりするあたりは、無理な設定じゃないよね。同じ警察組織内、身内同士の腹の探り合いなんか…「新宿鮫」の鮫島と香田みたいで面白かったですね。
読みながら、頭の中で、実写化した時に、誰が巻島役が似合うかな~なんて想像してたんだけど、最初は役所広司あたりかなって思いもあったんだけど…映画版の「デスノート」で夜神月のオヤジを演じていた鹿賀丈史なんかも似合いそうかなって…。
個人的採点:75点