ベートスンの鐘楼 影の探偵と根津愛 著:愛川晶
ベートスンの鐘楼
影の探偵と根津愛
- 愛川晶:著
光文社 ISBN:4-334-07562-2
2004年5月発行 定価1,400円(税込)
愛川晶の影の探偵と根津愛シリーズの第2作目「ベートスンの鐘楼」を読み終わる。新書で約550ページという、なかなかのボリュームで読み応えあり!事件は新しいものだが、前作「網にかかった悪夢」の続編であり、その中で明かされた、主人公に関するとある秘密が、今回も重要になってくるので(というか、このシリーズの一番の売りなんだけど)、シリーズは順番通りに読んだほうがいいと思います。万が一、このシリーズを読んでみたいと思っていて、まだ「網にかかった悪夢」を読んでいない方がいましたら、多少、前作に関するネタバレが含まれますので、これ以上、文章を読み進めないで下さいね!
古びた日本家屋で、なんと手製の巨大なギロチンで首を切断された死体が発見された!現場は密室であり、被害者の首も持ち去られていたことから警察は殺人の方向で捜査を開始!高校生でありながら、抜群の推理力の持ち主、美少女探偵・根津愛は知り合いの桐野刑事から、いつものように事件について意見を問われるが…、今回はあまりのる気じゃない様子だ。その理由は知り合いの美少女中学生、大隈敦己から受けた相談事に起因する…。そんな敦己は、死亡と診断された人間が、棺に入れられた後に蘇生したという妙な事件に端を発し、吸血鬼に関する事柄に興味を抱いていたのだ。さらに、土葬された死体が消失するという事件が続く…。
美少女代理探偵・根津愛というシリーズとは別に、同じ愛ちゃんがワトソン役に徹する別シリーズの“影の探偵と根津愛”。多重人格で殺人鬼“ナオ”という別人格を有する、美少女中学生・大隈敦己ちゃんが今回ももちろん主人公。前作では、これがちょっとした作品の仕掛けになっていたわけですが、今回はその設定を理解しているというつもりで、物語は進みます。まぁ、こうなった詳しい経緯は前作を読むのが一番である。
奇抜な事件が発生し、それらが連鎖して、意外な事実が浮かび上がり…、最後には探偵がトリックと犯人を鮮やかに暴き出すという本格推理。そこへ持ってきて、シリーズ通してのお楽しみである多重人格と、今回のテーマである“吸血鬼”や“死後の蘇生”といった、オカルティックな題材がミステリアスに絡み合って、なんとも魅惑的な世界を構築。意味深なプロローグではじまる、いくつもの計算つくされた伏線も見事。前回の仕掛けほどの驚きはないが、今回も何気ないところで、作中の某人物のように、まんまと作者に騙されて“やられた!”と思う瞬間があったりね…500ページ以上の長さを飽きさせないアイデアがいっぱい詰まっています。
事件の解明やキャラクターのやり取りも非常に面白いが、それ以上に、吸血鬼や“生と死の曖昧な定義”についての数々の薀蓄に、感心させられてしまう。まだ新しい続きは出ていないみたいだけど、これからも目が離せないシリーズですね!?
個人的採点:75点