青春時計 著:森橋ビンゴ 川上亮 緋野莉月
青春時計
- 川上亮 森橋ビンゴ 緋野莉月:著
富士見書房 ISBN:4-8291-6325-9
2005年11月発行 定価588円(税込)
ライノベ系の作家三人による共著「青春時計」を読んだ。ひとつの物語を、三人のキャラクター別の視点で描くことによって、新しい真実が見えてくるという…手法的には別に目新しいものではないのだが、ひとつの作品で作者が別という試みはけっこう珍しいのでは?ジャンル的には青春ラブストーリーだけど、富士見ミステリー文庫から出ているから、“その他のミステリー”に分類しておく。
高校生の聖司と駿介は幼い頃からの幼馴染。そんな2人が、春休みの学校で、一人の少女と出会った。同じ高校の生徒でもないし、2人よりもちょっと年上のその少女の名前は慧…実は、聖司と駿介が通う学校の敷地内にある時計塔を設計した人物の孫だという。慧は海外留学を考えており、日本を離れる前に祖父の作った時計塔を見ておきたかったというのだが…実はその時計塔は壊れていたのだ。聖司と駿介は慧の為に、自分たちで時計を修理しようと思いつき…慧も巻き込んで夜な夜な学校へ忍び込む。
聖司の日記 森橋ビンゴ
突然現れた、少女に心を奪われてしまう…うぶな高校生の片想い物語。ついでに、お前はホモなんじゃないかとも疑ってしまうほど…親友の駿介を信用しまくっている、本当に人のいい高校生の男の子。他の2人の視点で、色々な真実を語るので…まぁ、大まかなストーリーをなぞった感じで、けっこうあっさり気味。その代わり、最後のエピローグ部分で、聖司視点がもう一度あるので、上手に、帳尻が合わさってる感じがした。
駿介の日記 川上亮
無口なくせして、けっこう女慣れしてそうな、積極系な秀才タイプの高校生だけど、実は聖司には言っていない秘密が…。聖司視点だけだと、ただの片想いかなと思わせておき、やっぱり三角関係になってくるんだよ。それぞれのキャラクターの過去などを掘り下げたりしていて、物語もけっこう面白い。
慧の日記 緋野莉月
駿介視点よりも、もっと色々な秘密が暴露される。っていうか、慧って頭も良くて、かなり美人らしいけど…案外、嫌な女だったのね(笑)って思っちゃうような展開。三角関係なのかと思ったら、もっとドロドロだったり…。じーちゃんの思い出、留学の為と綺麗にまとめてはいるが、うーん、なんか年下の男を上手に手玉にとっていただけのようにもみえてしまい、淡い青春物語の影には、かなりリアルで残酷な一面がって感じでしょうか?
複数の作家で描き分けているので、視点が変わると、本当に印象がガラリと変わるから面白いね。川上亮だけは、昔「ラブ☆アタック!」っていう、パソコンの出会い系サイトを題材とした、なかなか偏屈なラブストーリーを読んだことがあって、これがけっこう面白かったんだけど、あとの作家さんは今回が初めてだった。
個人的採点:65点