包帯クラブ 著:天童荒太 | 105円読書

包帯クラブ 著:天童荒太

包帯クラブ

天童荒太:著
筑摩書房 ISBN:4-480-68731-9
2006年2月発行 定価798円(税込)









タイトルに惹かれて天童荒太の「包帯クラブ」を読んでみた。心に傷を負った少年少女が自分たちの手で、生きる道を模索する姿が描かれています。イジメだ自殺だと、世間での若者に関する最近の暗いニュースなんかも考えながら、大人にも、子供にも読んで欲しい物語になっている。

ワラという愛称で呼ばれている16歳の女子校生、笑美子は…町を見下ろすために昇った病院の屋上で、不思議な少年ディノと出会う。彼との出会い、会話がきっかけで…自分が傷ついた原因の場所に白い、包帯を巻きつけるという行為によって、心が癒されることを発見し…悩みを抱える友人同士で行為に没頭。次第に、自分たちだけではなく、この行為で他の人たちも助けられないかと思いつくのだが…。

悩みの大小は、ものさしなんかでは測れない…言葉だけで分かったようなことを説教されるのって、自分たっちだって本当に腹立たしく感じることが多々ある。特に世間を騒がせているイジメや、自殺の問題で…子供と親・教師など大人との間で一番、問題になる部分ってここだよね。子供の気持ちを本当に分かろうとしないで、常識だけでごり押しするしか考えていないんだから、溝は深まるばかりだよね。

そういう子供たちが、包帯を巻くという行為で、悩みを具現化し、仲間と共有することで…前向きになっていく。心から相手の目線に合わせる事の大事さみたいなのが、よく理解できます。それと同時に、信念を貫くことの大事さも最後まで読むと伝わってきましたね。強く生きていくため、他人にやさしくなるための、ヒントがたくさん詰まっている作品だった。

あと、新しいものにはなかなかなじめないのが、大人なんだよねっていうのも改めて感じたし。

高校生の避妊知識の話とか…あった、あったこういう話と、つい懐かしくもなりながら…、やっぱり大人の勝手な都合で、何でも隠してしまうという教育方法に問題があるってことに疑問が浮かぶ。子供に不純な行為はしちゃいけませんと言いながらも…セクラハラ、痴漢、盗撮なで捕まる大人(特に教職者とか公務員とか地位がある人の方が多いんだ)がいるんだからね、矛盾してるよ。こういうことも、出てくる高校生たちの恋愛感みたいなので、さりげなく語っています。

高校生を主人公としているので、語り口は非常に軽く、物語のテンポもあり面白いんだけど…テーマ性がしっかりと感じられる内容になっているあたりは感心です。






個人的採点:70点