浪漫探偵・朱月宵三郎 屍天使学院は水没せり 著:新城カズマ
浪漫探偵・朱月宵三郎
屍天使学院は水没せり
- 新城カズマ:著
富士見書房 ISBN:4-8291-6117-5
2001年3月発行 定価567円(税込)
前に読んだSF小説「サマー/タイム/トラベラー」の新城カズマのミステリー小説を見つけたので買ってみた。表紙のイラストから察せられるとおり、富士見ミステリー文庫というライトノベルな作品です。ただ、このイラストに騙されることなかれ、中身はとんでもない怪物です。全然、中高生向きじゃないし、そこそこ読書好きの大人だって、読むのに一苦労するのではないかと思われる、一癖も二癖もある難解な作品です。100円で見つけてきた本としては、メチャクチャ読み応えがあったけど、ライノベ感覚で手を出しちゃったので、頭使いすぎて、ちょっと疲れた。
全寮制の女学院、聖クラリッサ学院に転校してきたばかりの深草真夜は、図書館で一人の少女をよってたかって責めながら、怪しげな儀式を行う先輩たちを目撃。思わず仲裁に入ってしまった。実はその少女も転校してきたばかりで、目羅乃乃子と言う。妙な成り行きで、出会ってしまった2人、噂好きの乃乃子が仕入れた学園内で起きた“猟奇殺人”の話を聞いていると、その直後、謎の巨猿が現れ彼女たちを襲った。そのピンチを救ったのが、時代錯誤な格好をした不思議な青年・朱月宵三郎だった。実は三郎は、長い間、本の中に封印されており、真夜を助けるために抜け出してきたのだ。今回の事件の影には、同じく封印されていた夕闇男爵という三郎の好敵手が関わっており、その人物が真夜を狙っているという…。
冒頭のさわりの部分を紹介してみましたけど、きっと物語の内容なんて、全然イメージできないと思いますよ。こういうのってメタミステリっていうのか?とにかく、メチャクチャなお話です。大昔の探偵小説を思わせる文体で語られ始めたと思いきや、化け物は出てくるし、封印やらなんやらファンタジー系なのかと?でも、密室で行われた猟奇殺人やら、謎の暗号やらを解くなど、物語の真髄では本格推理も忘れちゃいない。素っ頓狂な萌えキャラ出てくるあたりは…しっかりライトノベルというのを意識していますね。
独特の文体で、言葉巧みに読者を翻弄していきます。作品の骨格やオチなど講談社ノベルで出ている、北山猛邦作品みたいなのが好きな人はいいんじゃないですかね?ああいう作品をもう少しライノベ風にしたって感じ?あとがきで、原作者も詳しく語っていますが…偉大な先人へのオマージュであり、パロディであり、変化球の推理小説として…玄人向けの作品ですよ、やっぱり。読書好きの人からは、かなり評価されているようです。自分ももう少し知識を見に付けて、いつかは再読してみたいななんて思ったり…。
個人的採点:70点