蛍 Firefly 著:麻耶雄嵩
蛍 Firefly
- 麻耶雄嵩:著
幻冬舎 ISBN:4-344-00664-X
2004年8月発行 定価1,680円(税込)
麻耶雄嵩の「蛍 Firefly」をハードカバーで読了。今年のはじめに、新書にて再発売されている模様。
オカルトスポットを巡る大学のサークル・アキリーズ・クラブの面々は、京都の山奥にある「ファイアフライ館」と呼ばれる屋敷へやって来た。そこは、かつて有名な音楽家が猟奇殺人を起こした場所であり、現在はクラブのOB、佐世保が所有している。件の殺人事件と同じ日に合宿を行うというのが彼らの中では恒例行事になっているのだが…、実は昨年合宿に参加した一人の女性メンバーが、その後、“ジョージ”と呼ばれ世間を騒がしている殺人鬼の餌食となっていたのだ。メンバーはその事件を忘れられず、心にしこりを残したままだった…。
途中、ややダレ場もあるが、麻耶雄嵩らしい本格仕様の極太推理小説ではあり、後半は見事な伏線とどんでん返しに酔いしれ、最終ページのエピローグまで気が抜けなかった。ただ、トリック&犯人など他の麻耶作品と比べると、全体的に分かりやすい内容ではあったかなと…。最後の最後のオチには思わず、不謹慎にも笑ってしまった。
嵐の山荘ものという…本格推理小説ファンにとっては、それだけで贅沢なご馳走なんだけど、思ったほど進行形で起きる事件の方が派手ではなかったかなと…。「ファイアフライ館」を舞台にした音楽家たちの事件、または殺人鬼ジョージと…過去の出来事のほうがインパクトがありすぎた。それに負けないくらいのおどろおどろしい事件を、起こして欲しかった気もするのだが…事件の当事者たちが、冷静すぎちゃって、どこか緊迫感が欠けるのが勿体無い。トリック優先なのかなという解釈もできるか…?もちろん、それらの過去の事件も、しっかりと物語には関わってくるのだけどね…。
綾辻やシマソウの後継者的な作者だけに…本格好きなら読んでおいた方がいいですよ。充分、楽しませてもらいました!
新書版 蛍 幻冬舎 2006年1月発行 定価880円(税込)
個人的採点:70点