狂い咲く薔薇を君に 牧場智久の雑役 著:竹本健治
狂い咲く薔薇を君に
牧場智久の雑役
竹本健治:著
光文社 ISBN:4-334-07631-9
2006年4月発行 定価840円(税込)
別のシリーズで主役をはっている牧場智久という探偵が脇役になって登場する、竹本健治の連作短編。あとがきを読んだら、漫画原作として用意した企画が、ポシャッたのでそのアイデアを生かしてアレンジしたそうで…あまり多くの竹本作品を読んでいない自分でも、雰囲気の違いが感じられた。なんか、霧舎巧の霧舎学園みたいな、軽い感じのラブコメ風学園ミステリーとして楽しめる1冊であり、ライノベ感覚でも読めちゃうのでは?しかし表面上は軽いタッチだが中身はしっかり本格推理になっているので、ミステリマニアも充分楽しめるはず。
騒がしい密室
明峰寺学園に通う高校一年、津島海人…突如、始まった校内放送で同級生の少女に名指しで問い正されてしまったのだが、本人には何のことかさっぱり理解できない。その直後、その少女が密室の放送室で自殺を図って死んだ。学校中の生徒から批難の目が向けられた海人の信頼を回復させるため、憧れの先輩、武藤類子と事件の調査を開始!類子は事件を解決させるために、頭脳明晰な天才棋士牧場智久に助っ人を依頼した。
密室トリックをメインに、色々と残された手がかりからの犯人探し。挿入されている挿絵なんかにも、さりげなく手がかりがあったりして、犯人やトリックなども読者にも割と正解が導きやすいようになっていたのでは?
狂い咲く薔薇を君に
津島海人は、演劇部の部長に担ぎ出され、イギリスの薔薇戦争を元にした史劇で役者を演じることに…。その舞台の本番中、演劇部の看板女優が演じる姫が、暗殺者に矢で撃たれて絶妙するという迫真の演技を披露した直後に…実際にボウガンの矢で刺されて死んでしまった。全校生徒が見守る中で起きた殺人事件…舞台を偶然見に来ていた牧場智久も加わり、捜査を開始する…。
表題作ってことで…3作品の中で一番、計算しつくされた大掛かりなトリックものって印象が強かった。現場の状況だとか、トリックを理解するのにも、けっこう頭を使ってしまった(笑)読みながら犯人探しする余裕なんかなかったよ…。
遅れてきた屍体
津島海人はいつものように学校へ登校すると、なにやら人だかりができており、パトカーやマスコミで騒然としていた。なんと、学校の校庭で女生徒が殺害されたのだが、その姿があまりにも奇妙で、猟奇的だったのだ。死体から内臓が全て抜かれており、さらに死体は校庭に描かれたミステリーサークルの中に放置されていたのだ。オカルト狂いの生徒は宇宙人の仕業だと言い出す始末であり、被害者の女性ともオカルトに興味を持っていたらしい…。過去の事件を通し顔見知りになった刑事から情報を収集しながら、海人と類子は、今回は牧場智久抜きで事件を解決してやろうと意気込むのだが…。
学園内で起きた猟奇殺人…いち早く“ハウ・ダニット”ではなく“ホワイ・ダニット”だと劇中人物に宣言させ…何故、こんな手の込んだ猟奇殺人を行ったのかから事件を解こうと、ああでもない、こうでもないと突飛な推理を繰り広げていく。
全体を通して学園ミステリもののお約束のようなキャラクター活躍し…生徒が死んでいるのに不謹慎すぎる発言ばかりの、教師や生徒たちと、思わず事件は凄惨なのに笑ってしまうところもあったりする。キャラクターの登場の仕方とかやや強引なところもあるんだけれども、お約束として読むのがいいんだろうなぁと。軽い気持ちで読みながら、本格も味わえるといので良しとしましょう。
個人的採点:70点