孕み -白い恐怖- 著:佐藤有記
孕み -白い恐怖-
佐藤有記:著
角川書店 ISBN:4-04-381601-4
2006年1月発行 定価500円(税込)
角川のホラー文庫から出ているホラー小説だが、同名タイトルの映画を脚本家自身が小説化したものだそうなので、ノベライズに分類しておく。
中学生のゆいは…たった一度の同級生とのSEXで妊娠してしまった。世間体を気にした両親は…父方の妹…叔母夫婦が山奥で営むペンションに滞在し、そこでゆいに出産させることにした。しかし急激な環境の変化に戸惑いをみせる両親。ゆい自身も現実感を見出せないまま日々を過ごしていたのだが…近所に住む異様な風体の男の目撃し興味をそそられ、さらにその男の行方不明になっていた母親の死体を発見する…。
映画やドラマのノベライズっていうと…本当にシナリオそのまんまのような中身の薄い小説も少なくないんだけど、一応、想像力をかきたてられる文章にはなっている。しかし、文章が上手だとは手放しで誉める事はできず、人称がころころと変わるのが、けっこう読みづらい原因かと?
スプラッターホラーを扱った小説にも、綾辻行人の「殺人鬼」シリーズのように、本当にホラー映画を読んでいるような恐怖と、小説ならではのどんでん返しのビックリが味わえる作品があるのだけれども、この作品はその部分については、全くひねりがなくて残念ですね。
妊婦の中学生…古くは金八先生とか?最近もTVドラマで似た題材の作品がセンセーショナルに扱われているけど、その部分も、ようは、殺人鬼が跋扈できる舞台に、主人公たちを誘う手段にしかなっていないのね。雪山に連れて行ったってだけで満足しちゃってるみたいで…あらすじで読むほどショッキングじゃなかった。“孕み”=“妊婦”のことだと思っていたんだけれど、そういう意味合いも持たせながら、人間誰しも、腹の中ではどす黒いものを抱え込んでるいるといいたいようです。唯一、ピュアな存在のキャラに最後にあのセリフを言わせたかったようですね…。
これが映像になると、どんな風になるのでしょうか?DVDも出ているようなので、機会があったら見てみようかなと…。小説としてはちょいイマイチ。
個人的採点:55点