百万の手 著:畠中恵 | 105円読書

百万の手 著:畠中恵

百万の手

畠中恵:著
東京創元社 ISBN:4-488-01702-9
2004年4月発行 定価1,785円(税込)









東京創元社のミステリ・フロンティアの一冊として配本されたのだが、今年になって文庫化されているみたい(だから100円コーナーで見つかったのか)。この著者の作品を読むのは初めてだったのだが…著者初の現代小説ということ。

中学生の音村夏貴は父親を亡くし、母子家庭で育っている。最近、何かと干渉的な母親と喧嘩をし、家を飛び出した夏貴は…兄弟のように育った幼馴染の正哉の家に向かうのだが、なんとそこが火災に見舞われていた。幸いに正哉は外にいて助かったのだが、家の中に両親が取り残されているのを知ると、自ら炎の中に飛び込んでいってしまい、結局、助からなかった。目の前でその姿目撃し、彼の行動を止めることが出来なかった事を悔やむ夏貴も…ショックのあまり持病の過呼吸の発作が起き、救急車で病院へ運ばれた…。その夜、無事に自宅に戻ってきた夏貴は、最後に正哉と会話を交わしたときに彼の携帯電話を掴んで、持ってきてしまったことに気づく。すると、その携帯電話から、なんと正哉の声が聴こえてきたのだ…。この世に未練を残した正哉が、火災の原因が放火ではないかと訴え、夏貴に犯人探しをして欲しいと頼み込む…。

主人公が初っ端で、携帯電話に宿った、死んだ友人の幽霊と会話しちゃうわけだから…その後は何を言われても、どんな展開になっても納得するしかないです(笑)現代が舞台だけど、一昔前だったらSF小説の題材だよね、コレ?マッドサイエンティストが出てくるB級映画を見ているようで、エンターティメント小説としてはけっこう面白い。

ネタばれになるので、あまり詳しく書けないんだけど…最初は友人の仇討ちに、放火犯を捕まえようと思っていたんだけれども、実は主人公たちの出生の秘密が物語に深く関わってきて、主人公も何度も命を狙われて、知らず知らず事件の当事者になっていくという展開。

ストーリーもさることながら、大切な友人を失った主人公の少年の前に突如“未来の義父(母の婚約者)”が現れ、とっても胡散臭いオッサンなんだけれども(最初のほうなんて、存在自体が不自然でお前も事件に絡んでるのではないか?って疑いたくなるもんね)、事件を捜査する相棒となっていく過程が面白く描かれている。

予想に反して、大風呂敷を広げたSFチックな話なんだけれども、家族の再生・絆なんかもしっかりと描かれていて、そういうところもテーマになっており良かったと思う。


文庫版 百万の手  東京創元社 2006年6月発行 定価840円(税込)  






個人的採点:70点