私の優しくない先輩 著:日日日 | 105円読書

私の優しくない先輩 著:日日日

私の優しくない先輩

日日日:著
碧天舎 ISBN:4-88346-724-4
2005年2月発行 定価1,365円(税込)









デビュー当時は現役の高校生だったとかで、さらに色々な出版社の賞を受賞しまくった日日日(“ひひひ”と書いて“あきら”と読むらしい)の作品を初めて読む。ライトノベルの分野でかなり活躍しているそうだが、これは“恋愛小説コンテスト”という賞で大賞を受賞した作品なのだとか。榎本ナリコの表紙イラストが気に入って、とりあえず買ってみたんだけど…。

西表耶麻子は九州の近くのとある島に住む高校生。生徒数の極端に少ない学校の伝統的な方針で、球技、武道、その他の選択肢から自分のやりたいものを選び、1~3年の男女が合同で授業をするのだが、たまたま選んだ“その他”で、先輩男子生徒の不破と2人きりになってしまった。実は耶麻子は生まれつき病弱な身体なので、体育はいつも見学しているのだ。だから先輩と過ごすこの時間が大嫌いだった。そんなある日、片想いの南愛治に宛てたラブレターを不破先輩に見られてしまい、どういうわけか、2人の仲を取りもってくれるという…。

本当に、コレ高校生の文章かよ?と…文章力の上手さに驚く。最近は、有名な文学賞を若い人がどんどん獲ってるし、自分が好きなミステリー方面でも新人の若手がどんどん出てきているけど…中には子供の作文みたいな文章の人もいるわけだ。本当にこれで賞を獲ったの?本当にこれでベストセラーなの?って…。それが、この作者に関しては…いかにも高校生らしい今風の文体でありながら、どこか詩的で、文学的で、リズム感のある文章がしっかりと書かれているんだよね。

恋愛小説として、女子高生の甘く切ない初恋の様子…好きになる方も、好きになられる方も、そして周りのみんなも、不器用で駆け引きがヘタクソで…なんかそういう未熟な部分を懐かしく思い出しながら、読んでしまう。キャラクターの名前が作為的だったりするのが、ライトノベル的かなとも思うのだけれども…現代でありながら、都会とは違う、田舎の閉鎖的な空間を舞台にしているというアイデアはよく描かれていると思う。

それに加え、リズムよく読ませていって、しっかりとオチで驚かせる手法。“セカチュー”なんかよりも、自然な形でジーンと胸に沁みてしまう。

こういう才能のある若手が出てきて今後が楽しみだね。いくつか、100円コーナーで見つけた著者のライトノベルも買ってあるので、読んでみようとおもう。






個人的採点:70点