ゲッべルスの贈り物 著:藤岡真 | 105円読書

ゲッべルスの贈り物 著:藤岡真

ゲッべルスの贈り物

藤岡真:著
東京創元社 ISBN:4-488-43601-3
2001年8月発行 定価735円(税込)









藤岡真というあまりメジャーではない作家の「ゲッベルの贈り物」を読んでみた。巻末のあとがきや解説を読むと、一部の推理小説マニアには、けっこう評判だったらしい。文庫化は5年前だけど、最初に作品が発表されたのは1991年で、既に15年も前の作品なので…若干扱っている題材の記述が古臭く感じるか?

CM制作会社に勤める「おれ」…藤岡真は、上司の命令で、巷で噂になっているアイドル歌手“ドミノ”を探すように命じられる。“ドミノ”の素性は業界関係者も一切つかんでおらず、どこからともなく送られてきたテープでしか、その存在が明らかになっていない。それでも、彼女の魅力的な歌声に日本中は虜になっていた。一方…著名人ばかり次々に殺していく、殺し屋の「わたし」…いったいどんな目的があるのか?

数年前にハリウッド映画でもあったようなネタ。でも、15年前だったら某SFアニメあたりからの、アイデア拝借ではないかと思うのだが…。コンピュータ技術に関する描写は、15年前なので、最近の作品ほど緻密に描かれていないのだが…まぁ、そのアイデアを、現代的なミステリーの中に取り込むというのは、かえって今の時代の方が違和感が少ないだろう。15年前だったら、半分SFに感じたかもしれない。

さらに、戦時中、U-ボートと共に沈んだ日本の秘密兵器に関する話が最初から提示され、こんな歴史ものみたいな話が、どうやってSFっぽい話に絡んでくるのかと…なかなか大風呂敷を広げていて、楽しい。

また、見るからに怪しい「おれ」と「わたし」の二つの視点で描かれるストーリー…それぞれが交差すると、どんでん返しな秘密が…。さらに、主人公側にも、色々と意味深な描写があったりする。まぁ、それらの叙述トリック的どんでん返しは、伏線がしっかり描かれていたので、なんとなく想像がつくんだけどね、なかなかサービス精神が旺盛といいましょうか、よくまとまってました。

「おれ」視点で事件を探っていくところは、けっこうハードボイルドっぽい雰囲気もあったりね…色々な要素が絡み合ってましたね。






個人的採点:65点