ぼくらの時代 著:栗本薫 | 105円読書

ぼくらの時代 著:栗本薫

ぼくらの時代

栗本薫:著
新風舎 ISBN:4-7974-9602-9
2005年4月発行 定価890円(税込)









栗本薫のデビュー作「ぼくらの時代」を読む。2005年に出た文庫本だが、作品が発表されたのは1987年と…今から29年も前のこと。当時の江戸川乱歩賞受賞作品ということで、講談社から発刊されていて、その後も文庫化されていたようだが絶版になり…出版元が新風舎に変わった。

「ドレミファ・ベストテン」という公開歌番組の録画中に…観覧席にいた女子高生がナイフで刺されて死んだ。TV局でバイト中の栗本薫をはじめとするロックバンド“ポーの一族”のメンバーも、事件現場に居合わせたことから事件に関わっていくのだが…さらに第二の事件が起きる!

当時の若者の思想なんかが、色濃く反映された物語であるのだが、青春小説として普遍的な面白さで、今読んでも親近感は味わえるかなと。若者と大人の対立…男と女の違いはあれど、主人公のモデルは、どうみたって著者本人なわけで…30年近く前の若者の思考なわけだけど、大人に対する反発だったり、逆に大人から見て、若い世代の人間に全く共感できなかったりというのは…今も、昔も大して変わらないなぁと。また、次の世代になっても、世間では同じようなやり取りを繰り返していると、色々なことを考えてしまう。

出てくるキーワードには、やや古臭さを感じてしまう。TV業界、芸能界の描き方なんかも、“あの人は今”みたいな番組に出てくる、元アイドルの思い出話を聞いているような感覚だしね(笑)

主人公の栗村薫が書いている“小説”という構成になっていて、一人称と三人称の文章がごちゃ混ぜで出てくるんだけれども、作品の中でしっかりその言い訳を語っているところなど、ちょっと不思議な印象を受ける。栗村薫って、そもそもあまり読んだことがないのだが、デビュー作だからか、やっぱり文章の拙さは感じるかな?なんか、ひらがなが多いし…慣れるまでちょっと読みづらかった。

今の時代に読むと…ミステリーとしては、あまりパンチは効いてないね。衆人環視の中で行われる殺人事件という導入部はなかなかだが…最後のオチは、及第点か?






個人的採点:60点