透明人間 UBIQUITY 著:浦賀和宏 | 105円読書

透明人間 UBIQUITY 著:浦賀和宏

透明人間 UBIQUITY

浦賀和宏:著
講談社 ISBN:4-06-182336-1
2003年10月発行 定価1,155円(税込)









3週間ぶりくらいに浦賀和宏に戻ってきました…434ページと、130ページしかなかった「浦賀和宏殺人事件」に比べると3倍以上のボリューム(笑)この著者にしてみると、珍しく普通な感じの推理小説として読むことができたりするのだが、ただ文章の回りくどさが、かなりネックに…。

安藤直樹の友人、飯島の新しい恋人、小田理美…幼い頃に、たった一人の肉親だった父親が不審死を遂げており、現在は父から相続した大きな屋敷で一人暮らし。親代わりだった親戚とも没交渉、友人もいない理美は、孤独感から自殺未遂を繰り返していたが、飯島との出会いで変化が生じていく…。さらに、自宅の地下に大規模な研究所が隠されていることが判明。理美が成人するまで屋敷を管理していた弁護士や、父親の元同僚と名乗る男たちが急に現れ、父親が残したとある実験データを探したいという申し出が…。恋人の飯島に頼み、捜索に立ち会う理美だったが…手違いから地下の研究所に閉じ込められてしまい、あろうことか連続殺人事件が発生する。

最後まで一貫して、理美視点で描かれていくのだが…わざと小学生の日記風に、稚拙な文章で書かれた冒頭部分をはじめ、前半は自殺衝動にかられ、世間とちょっとズレのある主人公のグダグダとした愚痴や思い出話が延々と綴られていて、ちょっと飽きるね。読んでいるこっちが、けっこう憂鬱な気分になってきます。女の子の視点で描くなんていうのは、ちょっと「学園祭の悪魔」にも通じる部分なんだけど、相変わらず、若い女の子なのに、どこかオヤジくさいい印象が…。

で、ようやく中盤で、事件らしい事件が起きます。そこからは、急にハイペースになり人がバンバン死にまくる(笑)

H・G・ウェルズの「透明人間」がどうたらこうたらと偉そうな講釈が出てきますが…地下研究室で殺人事件が置きまくるという発想は、今までの作品で語られてきた、この作者の映画の趣味なんかと照らし合わせると、本当はポール・バーホーベンの「インビジブル」の方を下敷きにしてるんじゃないかと考えてしまうよ。

主人公のグダグダした感情表現に加え、いちいち、過去を振り返るたびに…コピペしたメールみたいに、同じ文章を何度も、何度も繰り返して書くから、本当にうざかった。クライマックスの真犯人との対決とかも、こういう手法で書かれていくので、全然、テンポが悪くて、ハラハラドキドキせんかった。現在進行形の話なのか、過去の思い出話なのか、頭の中でゴチャゴチャしてくるんだよね~。やたらと回想シーンが入る、映画やアニメって本当にうざいでしょ。小説でも同じだった(章立てになってたりとかだったら、まだいいんだけど)

透明人間の正体は何、誰?とか、雪の上に足痕を残さずに殺されたのは何故?なんていう話は、いかにも推理小説な突飛なアイデアで解決して見せるので、そこは面白かったんだけれども(グロテスクさなんかもいつもより控えめ?)、結局、オヤジさんの研究の謎とか、犯人のバックボーンとかあやふやでいい加減なので、400ページ以上も費やして読ませる内容なのかと疑問に思う。果たして、彼女の解釈だけで、ファンタジー的なオチとして納得しちゃっていいものなのだろうか?

個人的には、もう少し、余分な部分を削ぎ落とし、すっきりした内容で読ませた方が面白みが増すのではないかと思うところ。






個人的採点:60点