眠りの牢獄 著:浦賀和宏
- 眠りの牢獄
浦賀和宏:著
講談社 ISBN:4-06-182190-3
2001年5月発行 定価756円(税込)
浦賀作品を連続3作読んでしまった。
作家の浦賀は、かつて愛し、今は昏睡状態になっている亜矢子の兄からの召集に応じ、2人の友人、吉野と北澤と共に、亜矢子の家を訪れるのだが、その兄の暴挙により、家の地下に作られたシェルターに閉じ込められてしまった。階段から転落して昏睡状態になった亜矢子は、三人の中野誰かに突き落とされたのではないかと疑っているのだ。シェルターから出るには、犯人を突き止めなければならないと…。一方、外の世界では…福山冴子が元彼に復讐するため、メール友達と交換殺人の計画を練っていた。
著者ソックリの主人公が登場し、現実っぽい描写を入れるという…メタフィクション的な手法。三津田信三とかにも似てるね。
読んでいるときの違和感が、そのまんまオチにつながるという…正直、もう少し工夫が欲しいところか?著者のカラーでもある、猟奇さを出すために、前作にも登場した、カニバリズム的なものを、無理矢理…動機付けの部分にねじ込んだ感もあり。逆に別のアプローチの方が、ミステリ的には面白かっただろう。ただ、作中の、作家である主人公の言葉で、“分かりやすい伏線の方が、普通の読者にウケがいい”なんて言葉を発せさせたりしているのが、著者のあざとさがよく出ているよね。
何を書いても、ちょっとネタバレにつながりそうなこの作品…幾重にもトリックが重ねられているのだが、分かりやすいネタなので、著者が狙ったほどどんでん返し感は感じられない。気分転換に、そろそろ別の作家の本を間に入れようっと…。
個人的採点:60点