壊れるもの 著:福澤徹三 | 105円読書

壊れるもの 著:福澤徹三

壊れるもの

福澤徹三:著
幻冬舎 ISBN:4-344-00653-4
2004年7月発行 定価1,575円(税込)









福澤徹三の「壊れるもの」を読み終わった…ジャンル的には多分、ホラーになるんじゃないかな?直接的なホラー表現、グロテスク描写は控えめなものの、何の気ない日常的な生活の方が怖かったりもするのが現実だ。それだけでは物語は終らずに、幻想的かつ悲しげなオチが待ち構えており、読後はちょっぴり鬱な気分に…。

40歳を過ぎて郊外にマイホームを手に入れた、大手百貨店に勤める西川英雄…妻と娘と普通にささやかな暮らしをしていたのだが…いつの間にやら歯車が狂いだす。年頃の娘には煙たがれ、妻との関係も少しずつギクシャクとなる。会社では人間関係に悩まされ、リストラ候補。なじみの飲み屋で一人、酒を飲むくらいしか生きがいがないのだが…実は自分たちの住んでいる土地がなにやら曰く付きらしいという噂を聞きつけたのだ…。

20年間、会社と家族の為に尽くしてきたのだが、今ではただの邪魔者でしかない中年サラリーマン…娘に嫌われ、妻から疎まれ、会社に行っても不景気で会社の経営状態は芳しくなく、上司に頭を下げ、同僚には足を引っ張られ、オマケにリストラ対象?それは10年後の自分の姿ではないかと、下手なホラー描写よりも、リアルに恐怖が感じられる。作品の中では、もっともっと状況が悪化していき…読んでいるこちらも、人事ではない。夢も希望もあったもんじゃない、現実の怖さに直面するわけだ…。

どこで、選択を間違えたのか?あの時、こうしておけば良かったと…後悔することもあるだろう。もし、分岐点のひとつに戻ることができたら、人生はやり直すことができるのだろうか?という問いかけに…そんな甘い話があるわけないと、絶望的な解答が突きつけられるのが、この小説。

家庭不和とリストラに悩むサラリーマンをリアルに描写しながら、ジリジリと話はきな臭くなっていき…。

初めて読んだ作者だったが、わりと読みやすい感じの文章。ただ、物語の後味はあまりよろしくありません(笑)だから、オヤジ臭がバリバリ臭ってきそうで、メチャクチャリアルなんだって!?サラリーマンの人は、主人公に共感するのか、それとも自分を見ているようで嫌になるか…かなり微妙だと思う。






個人的採点:70点