スラムオンライン 著:桜坂洋
スラムオンライン
- 桜坂洋:著
早川書房 ISBN:4-15-030800-4
2005年6月発行 定価630円(税込)
現実とバーチャル空間の間で揺れ動く若者、オンラインゲームにハマった大学生を題材にした「スラムオンライン」を読み終わった。ハヤカワ文庫なんで、もっとSFっぽい作品を期待していたのだが…前に読んだ清涼院流水の「みすてりあるキャラねっと」にちょっと酷似。じゃあこれはライトノベルになっちゃうの?一応、青春小説っとことなんだけど…早川書房の公式サイトを覗いても、正式には特に決まったジャンルに属していなかった(笑)
大学一年の坂上悦郎は、オンライン対戦格闘ゲーム“バーサス・タウン”に夢中になっていた。彼の選択したキャラはカラテ使い…テツオと名づけられたそのキャラで、最強の格闘家を目指していた。そして“バーサス・タウン”には、強い相手にストリートファイトを仕掛けてくる謎の“辻斬りジャック”が出没し、悦郎もその正体が気になり始めていた。現実世界では、ひょんなことから知り合った大学の同級生、薙原布美子と、新宿周辺に出没するという青い猫を探す羽目に…。彼女とはそれなりに親しくなったものの…性格のズレからなかなか友達以上に昇格できず…。
ゲーム好きの人なんかは、オンラインゲームの描写に共感を覚えて、やたらと評判が良いのだが…パンチだ、キックだ、Aボタンダだ、って同じような描写の繰り返しには正直、飽きがくる。もう少し文章に工夫が欲しいところだ。
その反面…現実世界の話になると…主人公の無気力な感じ、現代の若者が持つ悩みがよく描けていて、けっこう面白いと思った。何の為に俺たちは生きてるんだろうな~って、チャランポランな生活している自分を反芻しながら、所々で共感。
性格は違えど、悦郎も布美子も、とにかく人付き合いは不器用なんだよね。だからまぁ、悦郎くんはオンラインゲームなんかに逃げちゃうんだけど…一応、現実とヴァーチャルの世界で色々な経験を経て、成長していくお話になっている。
女を取るか、ゲームを取るかって選択で、ゲームを選んじゃうんだよ、コイツ。でも、ゲームを選択したことによって、しっかりと何かを悟っていたので…選択は間違っていなかったのかな?ちょっと不思議なカップルが誕生するまでの、ラブストーリーということで、それなりに楽しめたかな。
個人的採点:65点