ギミー・ヘブン 著:松浦徹 脚本:坂元裕二
ギミー・ヘブン
松浦徹:著 坂元裕二:脚本
竹書房 ISBN:4-8124-2523-9
2006年1月発行 定価620円(税込)
同名タイトルの映画を監督自身がノベライズ化したもの。まだ、この作品は見ていないのだが、最近DVDにもなった。この前、レンタルショップに行った時に借りたかったんだけど、レンタル中だったのだが、ちょうど小説版が105円で手に入ったので、先に小説から読んでみることに。
視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚など…本来なら別個であるはずの感覚が同時に伴なってしまう“共感覚 ”という、特殊な感覚を持つ葉山新介。一般の人にはなかなか理解してもらえない症例の為、それを隠して日常生活をしている。そんな新介は、数年前に転がり込んできた野原貴史とデザイン事務所を経営しているのだが、実際は知り合いのヤクザの下請けで、盗撮アダルトサイトの運営というのがメインの仕事だ。ある日、サイト内でトラブルが発生。盗撮するのを条件に報酬を払って契約している一人の女が無断で失踪した。その女を捜索している時に、偶然、遭遇してしまった女子高生。なんとなく事務所に連れ込んでしまったのだが…実は、その女子高生の麻里は数日前に養父が殺されており、彼女もまた失踪扱いで警察が探していたのだ…。
著者自身もあとがきで認めているのだが、“脚本みたい”…試行錯誤で手直しはしたんだろうけど、それが払拭できていないのは確かである。
最初の方で、名前も書かずに意味深に登場させた、洋館に住む女子高生…主人公の新介たちの視点でファーストコンタクトした時にさ、直ぐに“洋館の~(中略)、あの少女である”って文章で説明しちゃうのね。せっかく小説という形で描いてるんだから、読み手の想像力が膨らむように、もう少しひっぱるくらいの努力をせんかとツッコミを入れたくなる!
テーマになっている“共感覚”に関しても…普通の人と異なった感覚の為に、孤独感を味わっているんだよって分からせる程度の扱いであり、テーマに全然深く突っ込んでないのね。映画のサイトに載っている解説以上のことは期待しないように。文章で見てもパっとせんので…これが映像になった時にはどうなんだろうか?“共感覚”というものを、観客に体感させるようなビジュアルが用意されているのだろうか??
キャラクターに関しては、配役の写真が載っているので、描きこみが不充分でみも随分、助けられていますね。というか、自分で俳優さんの姿を当てはめるくらいしか、楽しみようがない(笑)
オチもはぁ?って感じで…ミステリーとしてはありきたり。そのありきたりを、文章力でもっとカバーして欲しかったぞ。難しいテーマを扱っているようで、中身は薄いので、文章量も意外と少なく、1時間程度で、あっという間に読み終わってしまう。ノベライズなんで、やっぱり映画を見た後の補完的に用いる程度の役割にしかならないのかな?機会があったら、映画も見てみます。
個人的採点:55点