撓田村事件 iの遠近法的倒錯 著:小川勝己
撓田村事件 iの遠近法的倒錯
小川 勝己:著
新潮社 ISBN:4-10-126451-1
2006年2月発行 サイズ 定価900円(税込)
小川勝己の「撓田村事件」を読了…帯や表紙裏の説明文(または巻末の解説)に、横溝正史へのオマージュという言葉が掲げられているので、バリバリの本格推理を期待して読み始めたのだが…。
岡山県の山間にある集落、撓田。東京からの転校生が、足を切断され、赤松の木にくくりつけられた状態で発見された。さらに、この土地の権力者、朝霧家の行方不明になっていた老婆が惨殺死体で発見される。住民たちは、大昔に起きたある事件と結びつけるのだが…?最初の被害者と同じ中学に通う阿久津智明と友人たちは、事件の渦中に巻き込まれていく…。
文庫で700ページ以上ある本なんだけど、最初の200ページくらいは事件が起きません。田舎の中学校に通う主人公の視点を中心に、いかにその土地が、外界から遮断された、閉鎖的な土地柄なのか…そして恋に悩む中学生の心境をダラダラと語っています。方言による独特の言葉も多く…最初こそとっつきにくさもあるのですが、まぁ、700ページもあれば、次第に慣れてきて、後半では方言も苦にならなくなってくる。いかにも中学生らしい、ボンクラな発想に笑わせられながらも…三十路過ぎて“彼女募集中”の身である自分には、ちょっぴりリアルに共感できてしまう部分があるから、悲しいかな?
半分青春小説のような味わいなんだけれども…ようやく第一の事件が起きると、そこから先は、テンポよく色々な事件、謎が提示されていきます。猟奇殺人、見立て殺人、忌まわしい過去の惨劇…。事件の真相も二転三転し、ミステリーとして充分な読み応え。凄く陰惨で、猥雑な事件が起きているのだが…田舎のホノボノとした空気感と、センスの良いユーモアで緩和され、いい感じにミスリードされていくかな(笑)
探偵役となる某キャラクターに、もう少し名探偵らしいキャラ萌え要素が欲しかったかなと…。
個人的採点:70点