死人を恋う 著:大石圭
死人を恋う
- 大石圭:著
光文社 ISBN:4-334-73936-9
2005年9月発行 定価580円(税込)
なかなか100円コーナーに落ちてこなかったが、ようやく見つけた、昨年発売された大石圭の光文社文庫での書下ろし。過去に発表した短編をアレンジしたものなのだそうだが、そちら未読。女性の死体しか愛せない男の話。
自殺を決意した僕こと、石原は…車で人里はなれた山の中へ向かったが、目の前で別の集団自殺を図るグループと遭遇。そのグループにいた一人の少女の美しさに魅了されてしまった石原は、彼女たち全員が死んでいるのを確認すると、自分の自殺は取りやめて、その少女の死体を車に乗せて、自宅に舞い戻ってしまった。そして、その女性の死体を裸にし…交わってしまう。生きた女性との経験はない石原は、快楽に溺れていく。しかし、翌日、彼女の死体には異変が…。
何年か前に…洋画で「キスト」っていうのがあったよね。死体好きの女性が、男性の死体とセックスするという衝撃的な映画だったけど、その男性版。いわゆる死体愛、死姦を題材にしたお話。いつものように、物凄くオタクで変態な主人公なんだけど…何故か大石圭が描くと、微妙に共感できたり、親近感を抱いてしまうから不思議。さすがに、ここまでのことはしないけどさ…人間誰しもどこかに隠し持っている、屈折した欲望みたいなものを、チクリと刺激してくるんだよね。高校時代の同級生を思い出して欲情してみたりさ、人には大きい声じゃいえないけど、なんだか理解できる。
小説本編以上に…あとがきで作者が語っている、小説を書く切っ掛けにもなっている同級生の死で感じた正直な思いが、なんだか妙に生々しい。
最初は偶然だったが、次第に死体愛への欲望がエスカレートしていき、計画的な犯行に至ってしまう。何度か、女性の死体・遺体を入手するのだが、その方法がワンパターンになっていないところなんては、さすがで…小説としての面白さがしっかりと味わえる。
主人公の変態的な思考がどんどん変わっていく様、新しい犯罪に手をかけてしまう心理状態なども面白いのだが…それと対になって、社会現象にもなっている自殺サイトの問題も描かれている。最近は、世の中でも変態的な女性監禁事件とかさ、いっぱい報道されているけど…自殺サイトなんてを頼ってしまう弱者につけこんだ犯罪が出てこなければいいなぁと思う次第だ(なんか、そんな事件なかったっけ?)自殺サイトへの警告や批判の意味も含まれているのだろう。
個人的採点:70点