愛と悔恨のカーニバル 著:打海文三
愛と悔恨のカーニバル
打海文三:著
徳間書店 ISBN:4-19-861654-X
2003年3月発行 定価1,785円(税込)
猟奇殺人と倒錯した愛の形を描いたミステリー、打海文三の「愛と悔恨のカーニバル」を読む。実は、この作品に出てきた主要キャラクターの何人かが活躍する、前日談的な物語があるのだそうだが、そちらは未読。事件の主軸としては、別個の物語なので、読んでいなくても支障はなかったが、キャラクターを読み解いていくには、過去の作品も色々と重要そうだ。
予備校に通う戸川姫子は…小学生の時の同級生、田村翼と偶然、再会し…お互いに惹かれ合っていく。両親を早くに亡くしている翼には年の離れた姉、むぎぶえがいるのだが、子供の頃は姫子も姉のように慕っていた。そんな翼が、トラブルに巻き込まれて失踪…。そして姫子と深く関わりのある探偵社アーバン・リサーチが何故か翼を追いかけていた!実は、姫子が再会する前に翼が付き合っていた恋人が謎の失踪を遂げていたのだ。彼の行方を必至になって探す姫子の前に、翼の友人を名乗る男から接触が…。さらに翼が絡んでいるらしい連続猟奇殺人まで発生し、姫子は事件の渦中に巻き込まれていく…。
そんなに沢山の作品を読んだわけではないのだが、この人の描く、どこか倒錯した愛の物語が好きです。猟奇的で、暴力的で、淫靡なお話…なんだけれども、根はやっぱりラブストーリーなんだね。大人と子供、恋人、愛人、親子、仲間、追うものと追われるもの…その他作品に出てくる登場人物たちのどこか屈折した関係。それらがドライに描かれているんだけれども、ふとした瞬間に見せる深い絆だったり、愛情だったりのギャップが、読んでいて心地よい。
その反面、翼が犯罪に走っていく過程などで、やや物足りなさもあり、ミステリーとしての甘さが目立ったりして、他にも気になる点もあるんだけれども、ハードボイルド風の恋愛小説だと思えば、我慢できるレベルかな?文章や雰囲気で、一気に読ませちゃう作者のセンスでしょうね。面白かったです。
個人的採点:75点