ジウ 警視庁特殊犯捜査係[SIT] 著:誉田哲也
- ジウ 警視庁特殊犯捜査係[SIT]
誉田哲也:著
中央公論新社 ISBN:4-12-500923-6
2005年12月発行 定価1,050円(税込)
ホラー小説の「アクセス」などで話題になった誉田哲也の警察ミステリー「ジウ 警視庁特殊犯捜査係[SIT]」を読了。実は続編があり、次はタイトルがSATになっている作品があるらしいので、やや中途半端な形で作品が終るのだが、キャラクターの上手さと、テンポの良さは相変わらずで、どんどん作品に惹きこまれていく。そんなにたくさんの作品を読んだわけではないのだが誉田哲也で、いまのところハズレは少ない。
ある夏の日…都内で起きた篭城事件。本庁からは、SITこと特殊犯捜査係の第二課が出動、事件解決に当たるのだが、こう着状態に業を煮やした警備部はSATを待機させSITに圧力をかける!説得役に抜擢されたSITの門倉美咲…そして同じくSITの伊崎基子の活躍により、なんとか事件は解決するのだが…この事件を境に、別の大きな犯罪が動き出す…。
プロローグで語られる、とある誘拐事件…そして本編で語られる篭城事件。前半はかなり緊迫した展開が続く。二重、三重に張り巡らされる事件の真相。中盤は警察ミステリーとして日常的な活躍を描きながら、ラストに向かって、鮮やかに集約していく感じが、なかなか映画的で良い。
警察関係者の登場人物がやたらと多いので、名前を覚えるのに若干苦労するも…2人の女性捜査官がメインなので、途中からはこの2人に集中していればいいんだと気づいて、それ以降はすんなりと読み進むことができた。この2人のヒロインが全く対照的なキャラクターというのも、メインキャラの描き別けが上手な著者ならではの魅力か?特に、後半で大出世する伊崎基子の怖いくらいクールな部分には惹かれます。そして、タイトルにもなっている“ジウ”といキー人物も、基子に匹敵する冷徹なキャラということで、続編はこの2人の対決がきっと展開されていくのだろうと推測。
前半で活躍するSITのメンバーには、けっこう個性ある脇役もいて、もう少し活躍を読んでみたかったなんて思う部分もあるのだが…。SATの描写については…過去に読んだ黒崎視音の「六機の特殊―警視庁特殊部隊」あたりを思い出すかな?
アクション要素、ミステリー要素、キャラクターの魅力と、バランス良くまとまった警察ミステリとして面白い。早く続編を読みたいが…さすがにまだ古本で見つけていないです(笑)
個人的採点:75点