僕の推理とあの子の理屈 著:村瀬継弥
僕の推理とあの子の理屈
村瀬継弥:著
角川書店 ISBN:4-04-428001-0
2002年8月発行 定価600円(税込)
美樹本晴彦のカバーイラストに惹かれて買った、角川スニーカー文庫で出ている“スニーカー・ミステリ倶楽部”の中の1冊。ライトノベル系なのかもしれないが…突出した萌え度もなく(笑)、意外と硬派に本格ミステリーしている?内田康夫みたいな旅情ミステリーを、高校生の視点で描いていて、割と読みやすい内容になっているが…正直、インパクトは薄いか?
高校二年の洋は、中学の時に引っ越していった、幼馴染の吾郎が暮らす岐阜の山の中にある二木平村でひと夏を過ごす事になった。吾郎と共に、彼と親しくする井原姉妹という地元の美人姉妹が洋を歓迎してくれたのだが…実は洋が誘われたのにはある理由があったのだ。実は、お正月に村で起きた密室殺人の謎を一緒に解こうというものだった。事件は既に解決しており、犯人と思われているお年寄りの男性も既に病気で他界しているのだが、その男性と懇意にしていた三人は無実を信じ、絶対に真犯人は別にいるというのだ…。のどかだが、どこか閉鎖的な村の中で起きた殺人事件の調査に巻き込まれた洋だったが…事件の背景に土地の風習が絡んでいるのではないかということで次第に興味が沸いていく。
密室殺人ではあるが…奇抜なトリックがあるわけでもなく、かなりオーソドックスな真相。犯人も意外な人物を、しっかりとフェアな方法で導き出し、好感は持てるものの…物語としてのインパクトに欠けるか?
歴史だとか民俗学を物語に絡めており、プロローグで語られる、とある書物に記された“昼と夜では村人が異なる村”という摩訶不思議なお話と殺人事件との関連性を調べる過程の方に重点を置いているような印象を受けるのだが、こちらの真相も殺人事件の真相同様に、ビックリ仰天する事実でもなかったかな?
文章も読みやすいのだが、全体的にお行儀が良すぎて、どこか一辺でも突出した何かが欲しい…。
個人的採点:60点