ゴーディーサンディー 著:照下土竜
ゴーディーサンディー
照下土竜:著
徳間書店 ISBN:4-19-862017-2
2005年5月発行 定価1,995円(税込)
第6回日本SF新人賞受賞作品…表紙カバーの安倍吉俊のイラストに惹かれて衝動買い。表題作のほか、その物語に繋がる短編小説「仏師」を併録。
ゴーディーサンディー…6年前に施行された新しい法律のおかげで、公共の場であらゆる監視機器の設置が警視庁の判断の下に可能となり…監視システム「千手観音」のおかげで従来型の犯罪への抑止に大いに貢献し、安全維持が飛躍的に進歩した日本だったが、その監視システムを掻い潜って行われる新たな犯罪が登場した。人間の内臓を擬態内臓というものにすり替え、人間爆弾にしてしまうのだ。爆弾をとめるには、生きたまま対象者を解体手術を施すしかないのだが…すなわち手術の成功イコール対象者の死を表すことになるのだ。そんな事件を専門に対処する機動隊爆発物対策班の心経初は、どんな対象者にも臆せずに機械的に処理をしていくのだが…。
SFといっても宇宙とかが出てくるわけではない。宇宙人とか宇宙船やロボットがアクションを繰り広げるようなタイプの作品とは違います。明確には年代設定なんかは出てきてないのだが…自分の中では、今現在からそう遠くない近未来をイメージして読んでいた。システムと犯罪だけは物凄く発達した時代なんだろうけど、市民の生活は今とはそんなに変わっていないんだろうなぁって感じ。設定はSF的なんだけど、文学小説、恋愛小説よりなのかな?万人受けするような娯楽小説とはちょっと違う…。
まるで機械みたいな物の考え方をする主人公…森博嗣のミステリィに出てくる犀川先生みたいな、論理的、合理的な思考の持ち主。簡単にいっちゃうと、仕事の腕は一流だけど偏屈で変わった奴。
一応、一般市民を誘拐して爆弾に仕立ててしまう犯人と、解体屋との戦いというサスペンス的な構図にはなっているのだが…偏屈なにーちゃんが、人並みに恋したり、人の死に直面した時にどんなことを思うのかっていうのが重要になってくる。
ちょっと自分には理解し辛い作品なんだけど…今の人たちは人間付き合いが下手だっていうことなのかな?(あくまで、これは自分の考えなのであてにしないでください)
仏師…あらすじを語っちゃうと、そのままオチまで語っちゃいそうなんで詳しい説明は省略しますね。何故、「ゴーディーサンディー」に描かれているような時代になってしまったのかを語る物語。
個人的採点:60点