復讐執行人 著:大石圭
- 復讐執行人
大石圭:著
角川書店 ISBN:4-04-357211-5
2005年7月発行 定価620円(税込)
「処刑列車」と同時期にGETした、角川ホラー文庫、大石圭の「復讐執行人」を読了。前回読んだ「処刑列車」は旧作の文庫化だったので、やや文体などが最近と印象が違うなぁって感じでしたが、これは発刊時の書下ろしの新刊なので…いつものリズムに近かった。
美人の妻と可愛い娘に恵まれた香月健太郎を突然襲った悲劇!自宅に何者かが侵され、子供を惨殺。自分も腹部に深い傷を負いながら監禁を受け…目の前で妻が陵辱されている姿を見せつけられた。香月は幸いにも命を取り留めたが、妻の意識は戻らず…。復讐を誓う香月は執念で犯人を追う!一方、犯人の“僕”は…ある復讐を実行するために企てた犯行だった。この家族に、ここまでする、どんな恨みがあるのだろうか?
家族を殺され、人生をメチャクチャにされた平凡な男の復讐劇でありながら…異常な犯人の、逆恨み的な復讐でもある。お互いが復讐を成就させようとする姿、その執拗さが切々に描かれている。毎度ながら、ストーカー的な犯行に及んでしまう犯人の異常さに怖さを感じるわけだけど、彼の内面的なものにチクリと共感を得るものがあったりするのが、いかにも大石圭らしい。
「処刑列車」では、なんともいえないいや~なラストだったんですけど、陰惨な事件であり、復讐というテーマを描いているわりに、ラストでホッとさせられてしまうのは何故なんでしょうね? いくつかの復讐をテーマにした衝撃的な韓国映画のノベライズも手がけている大石圭だけに…あの韓国映画の鬼畜さとは違う、人間らしさを残した結末が、なんか良かったですね。
個人的採点:70点