処刑列車 著:大石圭 | 105円読書

処刑列車 著:大石圭

処刑列車

大石圭:著
角川書店 ISBN:4-04-357210-7
2005年5月発行 定価700円(税込)









また、久しぶりの更新になってしまった。結局、先月は2冊しか読んでないし(^^ゞさぁ、気を取り直して、今月こそたまっている積読本を少しでも減らしましょう!

大石圭の「処刑列車」をようやく100円コーナーで発見(一緒に「復讐執行人」もGETだ!)。他社でハードカバーで出版された作品が昨年、角川ホラー文庫に仲間入り。確かにおそろしいお話ではあるし、人もいっぱい死ぬが、思ったほど血みどろスプラッター感覚ではなかったかなぁと。

朝の通勤ラッシュを過ぎた、東海道線上り列車、快速アクティーが平塚、茅ヶ崎間にある鉄橋で突如停止。何者かによって列車が占拠されてしまった。運転手や車掌は次々と射殺され、犯人グループは乗客を限られた車両に閉じ込めてしまった。乗客に紛れ込んだ犯人たちが次々と現れ、犠牲者は増えるのだが…犯人側からは金銭的な要求も出てこない。いったい何が目的なのか?TVを通じて全国、いや全世界が見守る中…処刑は続く。

殺戮は行われるんだけど、かなり淡々と描かれているので、まるでスピルバーグの大量虐殺映画を見ているかのごとく、人間の死が当たり前になってくる。人が死ぬという怖さを感じなくなってきて…人間の生に対する執着、醜さといったものがどんどん浮き彫りになり、そういった部分の方が末恐ろしくなり始めるのだ。究極の選択…もし自分がこの列車に乗っていたら生き残ることができるのだろうか?

過去に出版されたものの文庫化であり、近作の大石作品を先に読んでしまっていたので…若干作品の印象が異なる。しかし多くの大石作品に共通する、誕生、出生という生きている人間全てが、誰もあがなう事の出来ない運命が根深く関わっているあたり、思わずニヤリとさせられるか?

出だしに比べて全体的なインパクトもテンポも、今のところ一番好きな大石作品の「自由殺人」と比べると、やや劣るかなって気持ちもあるが、なんとなく読み終わった後に、色々と考えてしまう要素は今までの中で一番多い作品であった。






個人的採点:75点