アイズ 著:鈴木光司 | 105円読書

アイズ 著:鈴木光司

アイズ

鈴木光司:著
新潮社 ISBN:4-10-378608-6
2005年5月発行 定価1,470円(税込)









「リング」でお馴染み、鈴木光司の短編集…。いくつも、何度も映像化された「リング」だけど…やっぱり怖いのは小説だけだ。あの怖さをもう一度味わいたくて…何度か鈴木光司の作品を手にするのだが、正直「リング」以来、恐怖を味わったことがない。今回も短編なので…案の定でした。ただ、中にはオチも程よく決まって面白い作品が何作かありましたね。

鍵穴
同級生の友人が、新しいマンションに引っ越したということで、久しぶりに会いに出かけ松浦は、その場所に見覚えがあった。同級生の大石は、自分たちが幼少の頃から憧れていたマドンナと結婚していたのだが、松浦と大石には彼女に秘密にしている事があった。それは…彼女のことを想っていたもう一人の男のことだった!

偶然なのか、必然なのか?物語の結末より…一人の女に執着しすぎた男の運命の虚しさ、儚さがよく描かれています。あんな格好で死にたくないなぁ…。

クライ・アイズ
ホテルの一室で、正面のマンションの住人に見えるように、女性を辱めている男がいる…一方、愛人を訪ねマンションを訪れた川瀬は、約束をすっぽかして居なくなってしまった相手を不審に思う。そんな時にマンションの正面に立つホテルの一室で自分の愛人らしき女の足が見えた…。

一番、この短編集で面白かったかな(おまけにエロイ)。どこかで感じていた違和感が、驚きに変わり…さらにって展開もある。短編としてよくまとまっていた。


夜光虫
恋人とその友人に誘われて、娘を連れてヨットでナイトクルーズに出かけた倉田貴子。目を離した隙に、娘が居なくなってしまった!そして、その時、海面に…。

イマイチ、ピンっとこないなぁ。

しるし
家族と共にマンションで暮らす小学生の由佳里は、玄関のドア前に度々現れる人影に脅えていた。その人物が現れると、玄関に決まってマーキングが残されているのだ。その意味は一体?影の正体は誰なのか?

一時期、実際に話題になったマーキング被害と、ホラーを結び付けています。一瞬、ホラー、オカルトっぽい結末じゃないじゃんと思わせておいて…。


親しい女性から映画に誘われた名波啓二…面白くもないその映画の中に現れたある風景に見覚えが合った。幼い頃の記憶が曖昧なのだが、確かにその風景の場所を自分は知っている!場所を調べた名波はその場所へ向かうのだが…。

最後でえっ?ってなります。自分がオチをしっかりと理解しているかも、自信ないなぁ~。たぶん、主人公の名波は●●●たのか?じゃあ、あの彼女は誰?

杭打ち
愛人とゴルフへ出かけた野末は、ゴルフ場の池で矢のような物が刺さった死体を発見した。一時は騒然としたゴルフ場だったが…結局は自殺として処理されてしまう。明らかに他殺だった筈なのに、何故、警察は自殺というのか?気になり始めた野末は事件の裏に、金づるになるような隠し事があるのではないかと考え調査をはじめたのだが…。

ホラー作品として無難な感じの作品だった。伏線とオチもしっかりと結びつくし。そのオーソドックさで、安心してホラー小説として楽しめたかな。

タクシー
不倫の末、ようやく結婚までたどり着いた詳子だったが…相手が事故死してしまい、呆然とする。あの時、自分が電話さえしなければ…。タクシーに乗り込んだ詳子は、彼との馴れ初めや、事故について回想し始めるのだが…やがてあることに気になり始めた。

やや感動系かな?ホラーというより、ファンタジーっぽかった。


町営アパートで続発する怪異な現象…その土地と、そこに住んでいるある家族の先祖が関係してきた因縁めいた物語。

戦国時代…織田信長がどうたらこうたらって話から始まって、終戦後の不幸な女性の話が語られる。それらが3章目の現代の話に結びついてくるんだけど、ストーリーがどうのこうのというよりは、死のあっ気なさというのを実感させられ、色々考えてしまいます。登場人物の一人、小学生の女の子は、そのあっ気なさから何かを悟ります。

見えない糸…あとがきにかえて
原作者が実際に遭遇した不思議な出来事…ある作品の元になった不思議体験を、小説風に記したもの。

元ネタも意外と不気味でしたよ…(笑)



話のほとんどが色恋、性絡みなのね(笑) 科学では証明できないような不思議な現象が描かれているのだけど、全体的に想像していた怖さは味わえなかった。「クライス・アイズ」「杭打ち」あたりは個人的に好きなタイプの作品。






個人的採点:65点