レヴォリューションNo.3 著:金城一紀
レヴォリューションNo.3
金城一紀:著
講談社 ISBN:4-06-210783-X
2001年10月発行 定価1,239円(税込)
先日、このシリーズの最新作「SPEED」を先に読んでしまったのだが、キャラクターに関することなど、こちらの作品とリンクしているようで、理解しにくい部分もあり、読む順番を間違えたと後悔したんですけど(笑)積読コレクションの中にコレもあったので、順序が逆になってしまったが続けて読んでみた。表題作ほか、3編の連作短編…。
レヴォリューションNo.3
有名新学校に囲まれた、おちこぼれ学校に通う“僕”とその仲間ザ・ゾンビーズの面々が、お嬢様学校の文化祭へなんとか忍び込み彼女をGETしようと、悪戦苦闘する!奇抜な作戦で、毎回成功の一歩手前までいくのだが…詰めが甘く、惨敗。高校生の彼らにとって3年目の今年が…最後の挑戦となるのだが…果たして成功するのだろうか?
最初、僕って誰だろうと思ったのだが…先に「SPEED」を読んでいたので、名前が出てこないヤツのことなんだなぁって理解できた。また、「SPEED」で繰り返し語られていた、ヒロシという友人の事もわかったし、彼に何が起きたかも、この作品で詳しく語られていた。順番を逆に読んじゃったので、どんなことが起きたか分かっちゃっていたのだが…それでもせつない気分にさせられますね。
ラン、ボーイズ、ラン
文化祭襲撃から3ヶ月…“僕”にも彼女ができたが、いまだ清い交際のままで、なかなか仲が進展しない。高校卒業を控えて、ゾンビーズの仲間と沖縄旅行を計画するが、みんなで貯めた旅費を仲間の一人がカツアゲにあい奪われてしまう。“僕”を中心としたゾンビーズのメンバー…旅行資金を調達するため日夜アルバイトに励む一方で、カツアゲ犯を探して金を奪い返すそうとする…。
「レヴォリューションNo.3」の後日談的なエピソード。友人ヒロシのことで悩む僕、恋のことで悩む僕…他の作品では高校生らしからぬ言動、行動も多々見られるが…なんかこの作品では普通っぽい一面も描かれていた。
異教徒たちの踊り
ゾンビーズの井上の姉の友人がストーカー被害を受けているので助けてほしいと頼まれた僕こと、南方は…最初は変態探しと安請け合いしてみたものの、ガードする自分自身も犯人から狙われ、俄然犯人探しに本気になっていく…。いったいどんな人物がストーカー行為を繰り返しているのか?とりあえず被害者の関係者から探ることになったのだが…。
ここで“僕”が、やはり南方だという記述がはじめて出てきた。3つの中では一番新しく書かれた書下ろしなのだが、時系列的には「レヴォリューションNo.3」よりも前の話になるんだね。あえてこういう順番で収録し、さりげなくヒロシという人物の背負っているものを、読者に突きつけるあたり、やはり構成の上手さを感じますね。
ゾンビーズが企んでる計画を、最後の最後まで読者に気取らせないという構成の仕方は、シリーズみんな共通してるんですね。推理小説で名探偵が確実な証拠を掴むまで、推理を出し渋るのと同じくらい…思わせぶりにひっぱるのが、なんか心地いい。
凄く面白かったんだけど…ただやはり自分は先に読んだ「SPEED」の方が長編なので好きかもしれない。理解しにくかったゾンビーズの意味深な発言があっても、長編の方がクライマックスへの盛り上げ方が丁寧なので、ドキドキ感が自分は増した。何度も悔やむけど、こっちを先に読むべきでした…残念。
機会があったら、他の金城一紀作品を読んでみようと思う(でも、今さら「GO」とか買うのもなんかなぁ)
個人的採点:70点