青空の卵 著:坂木司
- 青空の卵
坂木司
東京創元社 ISBN:4-488-01289-2
2002年5月発行 定価1,785円(税込)
外資系の保険会社に勤めるサラリーマン坂木と、ひきこもり気味のプログラマー鳥井…子供の頃からの幼馴染の2人の間にある、友情を通り越した関係。そんな2人が日常の中で出会う、不思議な事件を綴った連作短編集…。殺人事件とかは出てきません。
夏の終わりの三重奏
ひきこもり気味の鳥井を誘って、スーパーまで出かけた坂木…そのスーパーである女性とおかしな出会い方をする。初めて会った時は愛想もなく、その自分勝手な振る舞いに鳥井は苛立たせてしまったのだが、次に再会した時は急に愛想がようなって彼女から2人に近づいてきたのだ。勘の良い鳥井は、何か魂胆があるのではと考える…。そんな時、自分たちの住んでいるすぐ近くで、通り魔事件が頻発しているという情報を耳にするのだった…。
一番、事件らしい事件だったかな?その後のエピソードにも絡んでくるのだが、警察官の友達という設定なんかは、ちょっと話が上手くいきすぎじゃない?しっかりと推理小説にもなっているしね。作品の導入部としてはキャラクターも魅力的によく描けていた。
秋の足音
坂木はが偶然知り合った盲目の美少年塚田…。何者かに尾行をされているので助けて欲しいと相談をもちかけられたので…いつものように鳥井の知恵を拝借する。
これはなんとなく察しがついたかな。でも、ラストのカミングアウトはびっくり仰天。そこまでは、推理できなかったです。
冬の贈りもの
盲目の美少年塚田の友人で、歌舞伎役者・石川助六の元へ、ファンらしき人物から、古臭い亀の置物など、奇妙な贈りものが繰り返し送られてくる。不審に思った助六は、坂木&鳥井に助けを求めるのだが…。
春の子供
坂木が偶然知り合ったまりおという名の少年。迷子か?家出か?家庭の事情で父親を訪ねてきたらしいのだが、その父親も不在。必要以上のことを口にしないまりおが、何かの障害を持った子供なのではないかと心配になり、父親が戻ってくるまで面倒をみようとするのだが…。
ほんわかとした作品なのに、けっこう騙される快感という、推理小説の醍醐味が味わえる。人が死ななくても、犯人とか出てこなくても、推理小説って書けるんだって、あらためて実感させられた。
初夏のひよこ
ある事件で知り合った熟年夫婦が、小料理屋をオープン…その祝いに、坂木は鳥井を連れ立って店を訪れるのだが…。
オマケみたいな感じの10ページ程度の短い話。それぞれの事件で知り合ったキャラクターの思い出話みたいな、この巻のエピローグ的なエピソードだろう。
なんか、出てくるキャラクターが、とってもホモっぽくみえるんだよね。少女漫画みたいな…綺麗すぎる、臭すぎる友情話。好きな人はそういうところがツボなんだろうけど…。坂木司の視点で描かれていくのだが、自分のことは“僕”だし、出てくる人は“さんづけ”“くんづけ”で、お行儀の良さが、ちょっとむず痒いよね(爆)
作者と劇中人物の名前が同名なので、てっきり作者は男だと思っていたんですけど、巻末に原作者のインタビューが載っていて、「男か?女か?」という問い掛けがしてあった。それをあえて、語らず…素性明かしてないんだよね。そういえば、この少女漫画的な雰囲気は、もしかして女性作家なのか?話の内容よりも、正体を明かさない作者の方が、ちょっと気になる…。
キャラクター同士の関係の描き方は個人的に微妙なんだけど…各エピソードのゲストキャラみたいなのが、そのまま次のエピソードにも関わっていくという方法は、けっこう好きかもしれない。
実は「仔羊の巣」という続編を入手してあるので、近いうちに読んでみる。
個人的採点:60点